Dick

スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼のDickのネタバレレビュー・内容・結末

2.5

このレビューはネタバレを含みます

1. 初版2020.04.10

❶相性:不良。

➋2018年11月に公開されたパート1も駄目だったが、パート2の本作は、輪をかけて、劣るとも勝らぬ出来栄えだった。
①パート1で主人公カップルを演じた北川景子と田中圭は、本作では冒頭に登場するだけのゲスト出演のみ。
②本作では、パート1で助演だった加賀谷刑事役の千葉雄大と、その恋人の松田美乃里役の白石麻衣が主演を務める。2人共、パート1の2人に比べると線が細いが、この辺りは問題ではない。
③他には、加賀谷が逮捕した連続殺人鬼の浦野(成田凌)と、加賀谷の先輩刑事の毒島(原田泰造、ゲスト出演)と、が継続。この浦野の存在感がピカイチ。『羊たちの沈黙(1991米)』や『ハンニバル(2000米)』のハンニバル・レクター博士にはとても及ばない(笑)が、日本の警察陣が無能すぎるので、余計引き立つ結果となっている(笑)。次回作が作られるなら浦野が主役となる気配である。下記❺参照。

➌一番の問題は脚本。物語に無理がありすぎる。
①前作の浦野の逮捕で一件落着した筈だったのに、同じ殺人現場から新たに若い女性の遺体が次々と発見されるという幕開きは、よくある話だが問題ではない。
②本作では、上司の命令により、ITに強い加賀谷が、獄中の浦野の協力を得て、犯人探しに挑む(レクター博士と同じパターン)。その過程で、恋人・美乃里のスマホがハッキングされ、美乃里が囮になって協力するという設定。
③まあ、この程度は許せる。しかし、発生する幾つもの事件が、根本で繋がっているように描かれているが、こじつけが見え見え。
④更に、主人公の加賀谷を一番の容疑者に思わせる描き方は、加賀谷がトラウマを抱えていることを考慮しても、安易で白ける。
⑤容疑者の一覧
ⓐ加賀谷。
ⓑ浦野。
ⓒM:浦野の師匠。ネットワーク犯罪の黒幕(?)。
ⓓ火傷の顔の謎の男(井浦新):実は警視庁公安部刑事。
ⓔ笹岡(鈴木拡樹):IT会社社長。退職した加賀谷と共同経営者だった。
ⓕJK16/紗綾子:(高橋ユウ):仮想通貨犯に対抗するホワイトハッカー。
ⓖ根岸(音尾琢真):美乃里を誘拐する。
ⓗ吉原(平子祐希)浦野を見張る刑事。
ⓘ優香(奈緒):美乃里の友人。
⑥一応、最後には主な謎が明かされるが、こじつけがましく説得力がない。

❹タイトルの意味
①パート1『スマホを落としただけなのに』は、富田(田中圭)がタクシーにスマホを置き忘れたことが発端だった。
②パート2の本作『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』では、ラスト直前まで、誰もスマホを落としてはいない。しかし、最後に、美乃里がバスに置き忘れたスマホを、加賀谷が走って渡しに行く回想シーンが挿入されている。(記憶があやふやだが、冒頭に同じシーンがあったかも?)。
③続編なので、スマホを落としていなくとも、何の問題もないが、作り手の律儀なこだわりだろう。
④囚われの殺人鬼が浦野であることは言うまでもない。

❺パート3への布石
①本作のラストには、悠々と日本を脱出した浦野(成田凌)が、東南アジアらしき町を歩いているシーンが挿入されている。
②明らかに、パート3への布石である。
③志駕晃の原作パート3は既に発売されているそうだが、本作の評判がイマイチなので、映画は浦野を主人公にしたオリジナルになるかも?(原作未読なので、原作もそうなっているのかも?)

❻トリビア:「ミステリー」について
①公式サイトでは、本作を「SNSミステリー」と銘打っている。「ミステリー」は、今では「事件や謎を解決する」という幅広い意味で用いられているが、本来の「本格ミステリー」は、厳密な定義があった。
②即ち、「本格ミステリーとは、事件の手がかりをすべてフェアな形で作品中で示し、それと同じ情報をもとに登場人物(広義の探偵)が真相を導き出す形のもの」(Wikipedia)。
③「ミステリー」と銘打たれた映画は山ほどあるが、「本格ミステリー」の定義を満たしているものは殆どない。そんな中で、今年2月に公開された『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密(2019米)』(アカデミー賞脚本賞ノミネート)は、この必要条件を完全に満たした、極めて稀な作品である。
③反対に、1月に公開された『9人の翻訳家 囚われたベストセラー(2019仏・ベルギー)』はドラマとしては、良く出来ているが、「本格ミステリー」の必要条件は満たしていなかった。
④本作が「本格ミステリー」でないことは明らかである。

2. 追記2020.05.19

❶評価:
①KINENOTE:67点/100点/175人
②Filmarks:3.4/5.0/5,864人
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