のほほんさん

ジェシカののほほんさんのレビュー・感想・評価

ジェシカ(2018年製作の映画)
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突如若者が家の窓を突き破り、そこに女性を先頭に武装した集団が乗り込んでいく。彼らが若者を保護した後に、大量のドローンがその家に入って行く。
バチバチのバトルアクションかと思っていたが、バトルシーンは驚くほど少ない。

孤児と呼ばれる不良少年達が特殊部隊に抹殺される社会で、そんな彼らと共に暮らし救う女性がジェシカ。多分演じた女性はモデルさんなんじゃないかと思うが、長身で美しくカッコいい。
不良少年達(中には結構オッサンくさいのもおるが)はそんなジェシカの愛によって過去の荒んだ気持ちと決別して暮らしている。
ジェシカは彼らにとって完全に「母」だ。
彼らは皆、ジェシカの前では拾われた子猫の様に弱々しい。

仲間と暮らし、平穏を得ているけれども彼らは繊細で不安定。
仲間の死によって精神的にまいってしまったり、不安に押しつぶされそうになったり。偶然知り合った女の子と恋仲になるのもいれば、地元の若者と衝突する者も。

彼らは特殊部隊に見つかれば他の移住先を探して移動し続けて来た。
行く先は人の気配があまりない静かな所だけど、それでいてごくごく普通のショッピングモールがあったりする、今の社会と大して変わらない世界。
社会と上手く関わることの出来ない若者が身を守る為に武装し、繊細な気持ちを抱えて苦しみながら生きている。
これもまた今の社会となんら変わらない。
苦しみに耐えられずに焼身自殺する者がいて、それを見ていた1人は(日本刀が得物のライデンくん)は殺人を犯してしまう。


特殊部隊の攻撃が迫る中、彼らは逃げるのではなくて死が避けられない闘いに立ち向かうことに。それは、社会から隠れて生きてきた彼らが真正面からその社会に立ち向かうということ。


作品中に写る海や空がとにかく美しく、1人の少年が亡くなった妹と再会する水中シーンや光が2人を包むシーンとか、そんな一つ一つもまた非常に美しい。
アクションだと思ってたらとんでもない肩透かしなんだが、生きづらさを抱えた少年の苦悩を美しく描き出した、変わり種青春映画と言えそう。

「未体験ゾーンの映画たち」はこういうの観れるから面白い。