とーるさんし

ニューヨーク23番通りで何が起こったかのとーるさんしのレビュー・感想・評価

3.3
画面は縦構図で捉えられており、右側には路面電車や馬車の往来する道路、左側と真ん中は歩行者用路、奥にある電灯の高さを念頭に置いて視点を置いている。また、左側にはカメラを見つめ続ける少年がいるがこれは演出かどうか判別しがたい。

さて、件の男女はかなり早い段階から画面奥に見えており、視点の採択の仕方からこの男女が画面手前に接近し「事件」が起こるまでの時間、溜め、そして突発的事象による驚きを描こうとした映画と考えられる。だがしかしここで肝心なのは画面手前の穴から風が出ているように全く見えないことであり、何か風船なりゴミなりを飛ばして風の可視化を行っておかねば観客へのインパクトは薄くなる。奥から手前への歩行運動と空気の動きとを結びつけるものがない。

最良の活劇とは、通常では連想もしないような別々の運動が思いもよらず突発的に結びつき、より高次の止揚となって画面内にあられもなく露呈することを指すのであって、この短編は突発的事象が単なる突発的事象として終わってしまう点で物足りない。
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