Kumonohate

必殺!ブラウン館の怪物たちのKumonohateのレビュー・感想・評価

3.0
「必殺仕事人Ⅲ」あたりから、中条・三田村コンビによるイケメン効果が加速し、ひかる一平の加入によるコメディ化が進行したTVシリーズ。間に3作を挟んだ「仕事人Ⅴ」では、アイドル・コンビが京本・村上組にチェンジ、前作より登場の玉助がますますパワーアップし、イケメン路線とコメディ路線はピークを迎えた。そうした変化を、多少口惜しく思いながらも基本は受け入れつつTVシリーズを見ていたし、その劇場版なのだから斯様なソフト化に拍車がかかっているであろうことは容易に想像できていた。だが、それでも、公開当時、本作における必殺本来からの逸脱ぶりには失望した記憶がある。

だが、今回、29年ぶりに見返してみたら、案外楽しめた。

まあ、こちらの加齢に伴い、“「必殺」かくあれかし” という頑なさが和らいでしまったことも理由だろうが、何よりも、当時と今とのメディア環境の違いが大きいと思う。我々は今や、ディスクや配信により、それこそ第一作の「必殺仕掛け人」から手に入れることが出来る。虐げられた弱者が理不尽に嬲り殺され、その怨みを晴らすべく、最後に真打ち(多くは藤田まこと)が一刀のもとに敵を倒すという、本来の「必殺」を、今の我々はいつでも見たいときに見ることが出来るのである。だから「あの凄みの利いた必殺が失われてしまった、もう一度取り戻してくれ〜」と、柔らかくなってしまった「必殺」のことを嘆く必要が無い。「コメディー路線もこれはこれでひとつのバリエーションとしてはアリだな」と、心広く受け入れることが出来る。

自分を含めた従来の「必殺」ファンにとっては噴飯ものであった本作を、ひとつのマイナー・バリエーションとして受け入れられ日が来るなんて、何とも贅沢でありがたい時代になったものだと思う。
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