こたつむり

クロール ー凶暴領域ーのこたつむりのレビュー・感想・評価

クロール ー凶暴領域ー(2019年製作の映画)
2.7
♪ 感情の波をクロールで横切ってゆこう
  永遠の河をゆくスイマーよ!

ハリケーンVSワニVS美人水泳選手。
…と贅沢に詰め込まれた物語でした。
特にワニの造形は見事な限り。不意を突かれてガブリと噛み付かれるのは怖いですね。

また、ワニよりも怖いのが鉄砲水。
息苦しさを感じない構成が救いでしたが、水に飲み込まれる描写はイヤなもの。轟轟と吹く強風と相俟って、ハリケーンの恐怖が端的に伝わってきました。

あと、商売上手だなと思ったのが《犬》。萌えポイントをキッチリと用意しているのです。しかも、人の言うことをよく聞く賢い子ですからね。濡れる場面が多かったので風邪をひかなかったのか…心配になるくらいに可愛かったです。

と、なかなか面白い題材でしたけれども。
物語としては前のめりにはなれなかったのが、正直なところ。

パニック映画にしろ、モンスター映画にしろ。
混乱を描く物語ならば、主人公に期待するのは危機を突破する能力。でも、本作の場合、衝動的な対応が多く、萎えるどころかイラつくばかり。

例えば、ワニに襲われてスマホを落とす場面。
「アレを取り戻せばレスキューを呼べる!」と危険を顧みず取りに行く…うん。そこまでは分かります。でもね。彼女は取った瞬間に電話を掛けるのです。

いやいやいやいや。違いますよね。
先ほど、ワニに襲われたんですよね。
まず、周囲の安全を確認する行動じゃないですかね。右見て左見て後ろ見て。それを怠るから襲われちゃうのですよ。

確かにハプニングは物語として必要です。
でも、それを避けようとする努力が観たいわけで。あまり使いたくない言葉ですが「自業自得」という印象が拭えない主人公でした。我ながら器が小さい指摘でスミマセン。

まあ、そんなわけで。
怖さも馬鹿さ加減も中途半端。アレクサンドル・アジャ監督の持ち味を感じない物語でした。ちなみに愚息と一緒に鑑賞したのですが、僕よりも辛辣な感想が多かったです。一応、レイティングはPG-12ですが…成人保護者の助言は不要だと思うくらいに的確でした。
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