ShinMakita

今日から俺は!! 劇場版のShinMakitaのレビュー・感想・評価

今日から俺は!! 劇場版(2020年製作の映画)
1.5
80年代、千葉…ツッパリ文化最盛期の頃。軟葉高校の金髪・三橋とツンツン頭の伊藤は、喧嘩最強で鳴らしたコンビだ。彼らが以前戦った「開久高校」では、悪名高い「北根壊高校」が校舎を間借りすることになり、当然内部で喧嘩が勃発する。開久側は、番格の相良・智司の2人が消えたため統率力に欠けている。一方、北根壊側は、平気で人を刺すイカレた柳と巨漢の大嶽が仕切っており、あっという間に開久を制圧してしまう。そんな柳たちは、開久を倒したと言われる三橋&伊藤を次の標的とするのだが…

「今日から俺は‼️ 劇場版」

以下、ネタバレすることが男のたった一つの勲章。

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原作未読、アニメ版・Vシネ版、テレビドラマ版すべて未視聴で、さらにアンチ福田雄一という俺、普段なら間違いなく観ない作品なんですが、ハリウッドのブロックバスターが皆無のいま、苦境に立つ全国の映画館の救世主となっている「今日俺」と「コンフィデンスマン」を応援する意味合いで、鑑賞。コンフィデンスの方は、いちげんさんにはハードルが高くて断念しましたけどね。

さて、「今日俺」はどうだったか…


まず、俺のようにハナから貶す気マンマンの客が驚くのが…

冒頭、開久高校の普通男子2人が主要キャストの紹介をしていく説明セリフシークエンス。これが「いちげんさん」には非常に親切でクドくない。適切な尺で必要最小限の情報を提示してくれるのです。三橋・理子・今井の関係性もスッと頭に入ってくるし、そこから、この普通男子たちが登校して開久の状況がわかる部分へ移動するのもスムーズ。そして柳と大嶽の登場…この2人が会話から、大声で威圧するタイプじゃなくクレバーで理論的なのが分かるのも巧い。

とまぁ、序盤でいきなり没入してしまったわけです。

プロットは単純で、普通のヤンキーが悪いヤンキーを倒すというだけ。特攻服の女の子が勘違いで三橋を付け狙ったりと話がゴチャゴチャしそうになるんだけど、柳が自分の悪業をペラペラ喋ってくれるおかげですぐに氷解します。スジの運びは、明らかに「銀魂」よりも上です。悪役の設定も素晴らしく、単に暴力的なだけでなく、弱者を懐柔して身代わりを設定したり、キーホルダー販売でカネ稼いだり、ヤクザと同じ企業活動なのが興味深かったですね。



さて、アンチ福田雄一のアンチたる所以は、そのギャグ演出。笑わせるというより単なる悪ふざけで幼稚で内輪受けで無駄に長いという特徴ですが…

本作、それがほとんど無いんです。

尺伸ばしのギャグは佐藤二朗とムロツヨシに限定し、主要キャストたちはギャグが長引かないんです。しかも佐藤とムロのギャグは、ストーリーにキチンと関連づいてます。これ、凄い進化で、物語が停滞しないという大利点があるんですよね。サブカル周りのネタもないし、総じて普通にクスりと笑わせるレベルであまり寒くならないのが良かった。舞台が80年代ゆえ、なのかも知れないけど。

80年代描写が適当なのもプラスに働いたかも知れません。アバンのナレーションで風俗にちらっと触れるだけで、当時の雑誌・テレビなどのメディアへの言及はないし、商店街などの美術に力が入っているようにも見えない。「ギリ2000年代には見えない」レベルで、通行人の衣装も殊更に80年代を強調したりはしていないんです。でも、これは実は大正解。例えば篠原涼子の「サニー」なんかは当時の空気を再現できるかどうかが成否の分かれ目なんだけど、本作で80年代を煩く見せると、観客にはノイズなんです。観客の大部分は80年代を知らない若者なんだから。本作の80年代設定というのは、ヤンキーに実在感を持たせるためのファンタジー設定でしかないのです。

最近の若い俳優さんたちはあまり良く知らないけど、みんな達者だなぁと思いましたね。1番素晴らしいのは当然柳役の柳楽優弥で、彼のサイコっぷりも絶妙にコンプラ範囲内でドン引きさせないとこが巧い。「悪人伝」のマ・ドンソク同様、ちゃんとブレーキがかかっています。伊藤役の健太郎くんも良いけど、三橋役の賀来賢人の瞬発力・コメディ力は素晴らしいですね。暁星の先輩として非常に誇らしいよ(笑)。


…というわけで、今回の福田雄一は、あまり貶すところが無かったのが1番の残念ポイント。俺みたいなシロウトも、乱闘とライブシーンはちゃんとアガるし、非現実的描写も少ないしで、楽しめることは間違いなし。

あ。最後に一つ。キーホルダーを売りつけるシーンで柳が「悪モンを寄せ付けないアイテム」みたいな紹介をしてたけど、「アイテム」というワードは80年代では無かった気がしたのは俺だけ?アパレル界隈では使われていたかもしれないが、一般認知されたのはファミコン後期のような気もするが…
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