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古代の森のTOTのレビュー・感想・評価

古代の森(2017年製作の映画)
4.0
台詞なし、劇伴なし。
‪羽音や鳴き声、葉ずれが話すように語る映像と音響が、森に生きるモノの春夏秋冬に物語性を与える。
星のような蛍火から雪の結晶へ。
巡る命の環を覗き見るドキュメンタリー。
写真・映画・生物学を学んで実現した監督の夢と時間の結晶(準備に15年)凄い。どエモい‬。
やたらと鷲の尻をつつく鴉のおかしみ。
格闘技みたいな音をたててバトルする鳥。
蛇に睨まれた鼠のスリル。
穴蔵であくびするリス科の子。
梟、蝿、蜂、蛇、鹿、その他名前もわからぬ動物たちの森。
自然ドキュメンタリーにそこまで興味ない方の私でも、めちゃくちゃ面白かった。

以下、監督Q&A
◎構成
自然ドキュメンタリーを好まない人にも響くような構成にした。
例えば梟が雛に餌付けするシーンで説明ナレーションを入れれば、観客は説明を聞いて、対象の美しさを見なくなってしまう。
このような構成にすれば、観客が自分で面白さを見つけて、考えられると思った。

◎製作期間
ムース(ヘラジカ)が食事してるシーンを撮るのは3日かかった。
でも、ムースがリラックスして食事してる姿を撮れるようになるまでは3年かかった。
古代からの森は0.6%まで下がったが、リトアニア人は誇りに思っている。西ヨーロッパにはもう残ってないから。
稀少な種が住む森を探すのに8年、撮影に4年、編集は並行して行った。

◎その他
・編集段階で人間を入れるか口論になった。
・素材は4〜500時間。
・音はクリアに録るのが難しい。
例えば、鷲のシーンは鼠に集音マイクをつけ、3日たって帰ってきた鼠から音を集めてライブラリ化。
編集後にひとつひとつ音を入れた。
全ての音は映像を撮影した同じ場所で録音したモノを後から付けている。
・撮影時にウクライナで戦争があり、それがリトアニアに飛び火するかもと思った。死への不安な心情を蛍に託した。蛍が星に見えるように、自分が死んでも世界が回って行くんだということを表現したかった。
・リトアニア中の稀少種がいる森を回った映像を使ってるので、ひとつの森ではなく複合的なファンタジーの森。
・星に見える蛍のシーンは8つの映像を合わせた。
・最後の鹿は、自分が子供の頃から憧れた動物の楽園が今ほんとに目の前にあるんだという驚きを収めたもの。

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