ナガエ

エッシャー 視覚の魔術師/エッシャー 無限の旅のナガエのレビュー・感想・評価

-
なんとなく、思っていた映画と違った。
というか、特に何か想定していたわけではなかったんだけど、全体的に、あんまりおもしろくないなぁ、と感じられてしまう映画だった。

エッシャーや、エッシャーの作品には興味がある。あんな作品をどうして生み出せたのか、何を考えていたのか、ということには。

ただこの映画は、「エッシャーのひとり語り」という体裁で、エッシャーが自身の生涯を紹介していくような構成になっている。その語りは、エッシャーの手紙やメモなどから構成したという。「エッシャーが山を歩いている」「エッシャーがコンサートを聴いている」という、主観ベースの映像も挟み込まれたりする。そんな風にして、エッシャーの生涯を再現しようとするのだけど、僕としてはもう少し、エッシャーの作品そのものに食い込んでいくような内容だと良かったなと思う。

何度か登場する、エッシャーについて語る人物が出てくる(名前などは忘れてしまった)。その彼が、「エッシャーの作品は、芸術の世界で再び評価される日が来るだろう」と言っていた。エッシャーの作品は、全体を見ても驚きなのだが、細部を観察してもその凄さが伝わり、研究に値する、と。僕としては、そういう「研究」的な話がメインだと良かったなぁ、と思う。

同じ人物が映画の冒頭で、こんなエピソードを話していた。エッシャーの作品を初めて見た彼は、その感動を直接伝えようとエッシャーに電話をする。その中で、「素晴らしい芸術家だ」と伝えると、エッシャーは、「自分は芸術家ではない」と言ったという。そこで「じゃあ何なんです?」と聞くと「数学者です」と返ってきたそうだ。

エッシャーの語りの中にも、「自分は、芸術家と数学者の狭間を彷徨っている」というような表現が出てきた。自分としては、「無限を有限の内側に閉じ込めることが出来た」と感動しているのに、その美しさみたいなものを周囲がまったく理解してくれない、と嘆くのだ。とにかく、時代が早すぎたということなのだろう。

個人的には、ちょっと掘り下げ方が合わなかったけど、普段そこまで目にすることがないエッシャーの作品をたくさん見られたのは良かったです。
ナガエ

ナガエ