Smoky

パラサイト 半地下の家族のSmokyのレビュー・感想・評価

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
4.4
富裕層の欺瞞も、貧困層のルサンチマンも、格差社会への憤りも、全てを描きながら、どれにも感情移入も加担もさせない物語。勧善懲悪の分かりやすさを拒絶し、人間への愛情と不信感を同時に描くポ・ジュノ監督の作品の真骨頂。

最も印象的だったのは、タランティーノ的ラストではなく、その一つ前の章。大雨の中、階段と坂を下りに下って辿りついた我が家が水没しているシーン。災害や社会混乱は、いつも弱い者を直撃する。コロナ禍の今だからこそ胸を突くシーン。

頭での理解を一瞬にして超越する身体的感覚がもたらす無意識の反応こそが、差別や分断の本当の正体。物語を暗転〜加速させるスイッチを「匂い」という、映画では唯一表現できない要素に込めたポ・ジュノ監督はやっぱり天才。

綺麗事を語るのではなく、あらゆることに対して過剰なくらい意識的であること、自分自身を監視すること、その大切さを教えてくれる名作。
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