永遠の寂しんぼ

パラサイト 半地下の家族の永遠の寂しんぼのレビュー・感想・評価

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
4.6
『ジェットコースター、その先フリーフォール』

キム一家のパラサイト作戦のハラハラ感、現実の韓国に通じる深刻な格差問題を描いた社会性、見やすい映像、練り込まれた脚本と非常に完成度が高い作品で、オスカーも納得するしかない傑作だった。こういう娯楽として十分楽しめる上で独自のメッセージ性を放っている映画は好きだし、今後ももっと出会えたらと思っている。

脚本には無駄がなく見ていて全然飽きないし、絵作りも丁寧で映像、劇伴音楽も美しい。寄生完了後の夜にパク家族が帰ってきちゃって大慌てでギテク達がリビングを片付けるシーンとか最高。あんなドタバタしていても構図が決まってる上に音楽も壮大だからある種の芸術性まで感じてしまう。

後半の怒涛の展開もまるでリンゴが重力に従って木から落ちるようになるようにしてなったんだなぁという印象。埋めようもない貧富と価値観の差。消しようのない劣等感と敵愾心。これらを目が回るようなテンポで映し出していて引き込まれた。水害のシーンなんか自分の過去の経験もあってか胸に刺さる。

生まれた瞬間からある他人や世間との溝や壁。幸せになるチャンスが全員平等に与えられないどころか、他人を蹴落としてまで幸せになろうとする人がいるのがこの世界。捕食者がいない以上、人間の敵は人間だけだ。