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パラサイト 半地下の家族のKYのレビュー・感想・評価

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
4.1
ポン・ジュノ監督作。2019年カンヌ映画祭パルムドール作品。

英語字幕版で鑑賞。失業中のキテクは家族と細々と暮らしていた。ある日、キテクの息子のギウが裕福なパクという男の家の家庭教師として働くことになるが、そこから予期せぬ事件に巻き込まれ始める。

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格差社会という社会風刺をモチーフにオーソドックスなエンタメ映画として引っ張り、クライマックスで社会風刺を浮上させ後味悪い切れ味で幕を引く。ポン・ジュノ作品の集大成だった。そして『気候変動』で『格差社会の歪み』が露呈する映画でした。

個人的にはポン・ジュノ監督作では『ほえる犬は咬まない』『殺人の追憶』『母なる証明』の次に好きかも。ただ、言いたい事もある。

【起】

冒頭から半地下住宅という面白設定が魅力的。韓国住宅の独特な作りは海外の人間としてはかなり魅力的に映った。息子が家庭教師に行く過程が若干段取り的。

【承1】

家族4人が富豪の家にいかにして入り込むかというチーム現金強奪モノ的な物語動機で引っ張る。コメディに振り切る事で『本当にこんな簡単に信用する?』というツッコミはなく楽しく見られる。

富豪一家の『娘の家庭教師→息子の絵画教師→父のドライバー→母のハウスキーパー』という具合に入り込んでいく天丼なので展開は読めるものの、その過程が笑えるしテンポも良くて違和感なし。富豪家族が外出し、詐欺家族が豪邸を我が物顔にする所で承1は終わり。

【承2】

一気に展開が読めなくなる。

大枠としての物語動機はお決まりの『主人の留守中だと羽目を外してたら主人が急遽帰ってくる事に!さぁどうしよう!』というベタなものだけど、そこに地下の男の存在だったり洪水が入り乱れて、何処に向かうのか分からなくさせてくる。

そして終盤にようやくコメディからサスペンスに転調する。その転調仕方が面白い。ソンガンホの演技落差だけで転調させる。観客は富豪の匂い発言以降のソンガンホのを見て『怖い。今にも人殺しそう』と、一気にサスペンスを見ている気分に変わる。

【転結】

ソンガンホが怒りから富豪を殺す展開。しかし、ここで良かったのはあえて一度フェイントを使った事。ソンガンホが殺すのかと思いきや、地下の男が現れて先に虐殺。

一度観客が『ソンガンホが富豪を殺す展開じゃないのか』と油断してから富豪を殺す事で、驚きの展開に見せる事ができる。この辺りの構成力はやはり韓国映画の真骨頂に感じた。

ただ、格差社会モチーフが全体通して薄いので切れ味がそこまで強くはない。観客に感情移入させる度合いが弱い。

そもそも詐欺家族の背景にさして背負わせている底辺としての不幸はないし(コメディとして描写してるので楽しそう)、地下の男にしてもフィクション的すぎる。唯一体育館避難民と豪邸庭パーティーの対比画だけがリアリティがあってモチーフに見合うだけ観客が感情移入できる。

格差社会というモチーフはあくまでもストーリー構成のための目的に過ぎない。その意味で是枝裕和監督の『万引き家族』の方が、格差や家族という形態そのものへの問題提起の力はある映画だと思うし、ジョーダン・ピール監督の『US』の方が格差のエグみを描いてると思った。自分は今作の方がエンタメとして面白いから好きだけども。

動画レビュー↓

ネタバレなし
https://youtu.be/JDfN-7V62EM
ネタバレあり
https://youtu.be/LkKFtZcuzZA
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