to

パラサイト 半地下の家族のtoのレビュー・感想・評価

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
5.0
2019年11月7日 1回目

監督のピカピカの脳みそを、何の曇りもなく、世界じゅうの私たちに、最高のホヤホヤ加減で「ほら」と見せてくれる。

映画を見終わった後、監督が出演しているわけでもないのに、2年くらい前「オクジャ」の1回きりの上映会に来日してくれたときのポン・ジュノ監督のニコニコ笑顔が思い出されました。関わったスタッフが多すぎて字が小さくて読めないエンドロールの上で、監督の満面の笑顔がじわーっとこちらに浮かび上がってくるようでした。

2019年11月7日、今日の「パラサイト」日本最速試写会に、来てくれるかな?と思っていたら、やっぱり来てくれました。
ポン・ジュノ監督が、すでに世界各地で5万回くらい話しているであろう映画のことを、いろいろと話してくれました。

アフタートークでMCの女性が「アカデミー賞とってほしい」とキンキン声で繰り返すのがほんと野暮だなーと思ったけど、もしその人が今さっき見たばかりの映画の中の登場人物だとしたらどっち側かな、というといわずもがなだし、そういう私らだってどっちとも限らないんだから、そんなことを考えるのが野暮い、と思えた時点であーポン・ジュノマジックにかかってるなーって思えて、幸せで笑えました。

是枝監督が、プサン映画祭のインタビューで
「韓国映画界からもらう刺激を教えてください」
と聞かれて、こう答えていました。

(引用)
イ・チャンドン(『バーニング』)がいて、パク・チャヌク(『お嬢さん』)がいて、ホン・サンス(『それから』)がいて、ポン・ジュノ(『パラサイト 半地下の住人』)が出てきて、ナ・ホンジン(『チェイサー』)がいて。年代も作家性もバラエティに富んで、これだけ層が厚い。今の日本にはこういう「束になってる感じ」は欠けていますよね。

(以上、Yahoo!ニュース "是枝裕和監督インタビュー「文化的視点ない東京国際映画祭、プサン映画祭にもっと学ぶべき」"より)

ホンこれ!

インタビューでこれだけ的確に並べられる是枝監督もすごいけど、オッスその通り!

上記の監督や、ソン・ガンホ、ソル・ギョング、キム・セロンといったキラ星の俳優たちが繰り広げるハイレベルな世界のおこぼれを、この幼稚でつまんないのがデフォルトの日本の映画の隙間をぬって見せていただけるありがたさ。

ハングルはいつまでたっても分からないけど、日本語字幕をつけて上映してくれる配給会社と映画館があるありがたさ。

試写ほんとにありがとうございました。
ハガキをもらった日から今日まで楽しみすぎて、無事に見終えたさすぎて、なんということのない日常ですが何の事故も起きないように、どこか慎重に暮らしていたほどです。

-----------

2019年12月27日 2回目

映画「パラサイト 半地下の家族」先行上映で、ポン・ジュノ監督と"主演"のソン・ガンホさんがご挨拶!

11月の日本最速試写会で「パラサイト」みて、
その後キム・ギヨン監督生誕100年特集で、ポン・ジュノ監督が参考にしたという「下女」をみて、
他にもいっぱいキム・ギヨン作品みて、
今日の先行上映で「パラサイト」みていろいろ発見あって、
また「下女」みたくなって…。

幸せだわー。

ヨボー!(「レンの哀歌」笑)

---------------

2020年2月24日 3回目

新型コロナウイルスが吹き荒れるなか、
アカデミー賞受賞、凱旋舞台挨拶にポン・ジュノ監督、ソン・ガンホさんが来てくださいました。

1回目に楽しくみた後、
あのジェシカ・ソングのところが
韓国で流行った「独島は我が領土」の替え歌と知り、心がひゃっとしました。
2回目にみたときはそこが複雑でした。
アカデミー賞を受賞し、韓国で大統領と会食をした際、「あの歌を日本人も歌ってるんですよ」と笑っていたという記事を読み、ますますひゃっとしました。

凱旋舞台挨拶で、一般客の質疑応答などないけれど
もしあればこんなことを言おうかと妄想していました。

ポン・ジュノ監督は「オクジャ」のティーチイン以来、お会いするのは4回目、
ソン・ガンホさんは「弁護人」以来、3回目。
コロナの流行でたいへんな中でもいつも日本に来てくれてありがとうございます。

お二人の作品が大好きで、「パラサイト」の後に、ポン監督が尊敬するキム・ギヨン監督の映画も11本みました。
「パラサイト」のヒットのおかげで、「殺人の追憶」を含むポン監督の4作品も特集されていて、念願のスクリーンで見ることができました。

私はポン監督と同い年。
50年育つ中では「パトラッシュと歩いた〜」という歌のアニメもあり、子供を育てる中では「となりのトトロ」を何回も見せたり、ポン監督と共通するところがあります。
ポン監督の作品が好きで、尊敬するとともに、親しみも感じています。

監督と私の間に、争いごとはありません。
でも、作品中に「独島」の歌の替え歌を入れ、それを分からず喜んでいる日本人を陰で笑っていた、というところに、見えない溝を感じました。
戦争世代ではない監督が、映画の中で争いのタネを再生産しているように思います。
映画を通して監督の様々な思いのひとつであり本心を、私は受け取りました。
心がひゃっとします。

(以上)


でも、3回目の映画をみて、それはもういいかな、と思いました。

ひとつには、ソン・ガンホさんの人間力。
純粋なそのままの心で、そこにいること。
見終わった後に、ストーリー展開、テンポのよさ、コミカルさなどで「面白い」と感じるのですが、
じんわりした哀しみが残ることで、いい映画だなぁとしみじみ思います。
それはやはり、ソン・ガンホさんが醸し出すものが大きい。
B列という前から2列目の席で、スクリーンな下側からみて半地下の気分を共有できたのかもしれません。
今回改めてソン・ガンホさんのすごさを思いました。

もうひとつは、この映画全体に、韓国的なものがたくさん散りばめられていたこと。
テーマ設定や場所もそうだけど、人々のキャラクターやふるまいなどあらゆるところに今日の韓国らしさがありました。
独島の歌の替え歌も、そんな韓国の日常のひとつなのかな、と。
日本人が知らずに楽しんで、陰で嘲笑されているのは嫌なものだけれど、
そんなことを言えば、立場が違えば憤りかねない演出が映画じゅうにあるし、それはきりのないこと、という気がしました。

と思わせるほどの存在である、ソン・ガンホさん。
やっぱいいなぁ。

エンディングロールが流れているときに
前列客にだけ聞こえる程度だったけど
舞台袖の扉の向こうから賑やかなハングルのおしゃべりが聞こえて、
普通だったらいやだなぁと思うんだけど、
今日ばかりは大丈夫。
スクリーンで聞いたばかりのソン・ガンホさんのナマ声だったから。
舞台挨拶で聞くに、PRの応援に駆けつけた
草彅剛さんと初めて対面した歓待の声だったみたい。
to

to