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パラサイト 半地下の家族のひばのレビュー・感想・評価

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
5.0
人心掌握術に長けた底辺家族が富裕層へ仕掛けた侵略は計画的なものだった。他人の私生活を覗き見ることへの背徳的な好奇心は違和感から未知の感情へ加速する。図らずとも政治の体言者となる段差構造と劇毒のようなシニカル味。地面と窓が同じ目線の半地下がありふれた住宅形態だなんて知らなかった。笑いが絶えず、全シーン見応えバッチリ、カンヌパルムドールも納得の大傑作。そもそも韓国映画はどれもクオリティが高いし、ポンジュノ作品は絶対に面白いので、ようやく!という感想です。なんとなく彼の作品は富裕層と貧困層の格差社会を描いている作品が多い印象で今作もそこからブレないイメージですね。彼の作風で好きなのは、貧困層にも貧困層なりの幸せがあるにも関わらずそこに僅かでも幸せに浸っているところに金と権力の広範囲な脅威に加え今まで知識や新たな価値観という前向きにも捉えられる要素を浴びても、以前の生活の居心地良さを恋しがり排外意識を持たせるところだと思います。いつも飲んでためっちゃ薄い紅茶の味を忘れられずそれしか受け付けなくなるような。そういう部分を無視せずこれもまた人間の業であると突きつけてくるので居心地が悪く、実際自分はどちらかと言えば貧困層に値する人間であることからなんとなく共感してしまうのです。こんな地獄巡りはうんざりだと思っているのに不公平な世の中を愛してしまう。心のしわ寄せを食らうのは一体どちらの層なのか。その人間性に対する諦めだけではなく、でももしかしたらそこに希望があるのかもしれないと想像させるような、そういうところが魅力的であるし好きだなと思います。また大きな出来事でもことの壮大さより人間の感情が静かな波に揉まれて微かにずれていき着実に変化して出来事を凌駕するある意味繊細な作風でもあるように感じます。気味が悪いですよね。でもそこが最高なんですよね。
ネタバレしないで広めて欲しいなと言われてしまったのでもはや何を書いていいのかわからないけど、本当に楽しみにしてるならみんな言ってるように何も情報入れずに見た方が面白いと思います。今更だけど~~~。私も宣伝一切見ずに読みもしなかったので。あと日本版ポスターにも足ほしかったですね(追記:新ポスターには足ありますね!)


ポンジュノ監督がまさかのスペシャルゲストで登場し会場混乱喝采大はしゃぎでとても素晴らしい体験でした。まさかこの日韓関係に緊張がある中そんなことが起きると思わずポンジュノ監督が目の前にいたので何が起こったのかと思った。夢かな?ユーモアあふれた謙虚な方でした。明日にでも公開して欲しいと仰っていました!ほんとな!日本が最後の公開地となりそうなので盛り上げられたら、とのこと。トークショーのネタバレにならない部分だけ↓ に、ストーリーに大きく触れる部分はコメントに。間違いがあったらすいません
Q, この作品は何かにインスピレーションを受けたのでしょうか?
A, 自分の家庭教師のアルバイト経験から。裕福な家庭で、2階のサウナ室を見せてもらったりしたとき彼らの領域を覗き見した気分だった。数学を教えていたが2ヶ月でクビになったのであんなことは起きていないです笑

Q, キャスティングは?
A, まだほとんど何も決まってなかった数年前に17年の付き合いのあるソンガンホ氏にざっくりな構想と貧乏一家の父を演じてほしいとだけ。お~いいよ~って感じ。それから家政婦と長男だけはそれぞれの俳優さんに固定して想像を膨らませていることをそれぞれご本人に話しました

Q, カンヌではどうでした?
A, 全く実感が湧かなかった。ソンガンホ氏と一晩中飲みました!

Q, 気になる日本の俳優さんはいますか?
A, 樹木希林さんを尊敬していました。日本版『母なる証明』をつくるなら樹木希林さんにを演じてほしかった。素晴らしい俳優でした。今気になるのは浅野忠信さんと広瀬すずさん。スタッフと日本を舞台に何か作れたらという話を数年前にしました
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