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パラサイト 半地下の家族のikumuraのレビュー・感想・評価

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
3.8
【メリトクラシーとは窃盗である】
これまた事前情報なしで臨んだ方が良さげな映画だったので、なるべくシャットアウトして行きました。
中身に触れてそうなレビューも斜め読みで・・・(笑)
フィルマークスやってるとそういう術も身につきますね(なんの役に立つのか)

カンヌを取っただけあって、よくできた、社会批評としてもエンタメとしても素晴らしい映画でした。
よくでき過ぎてて個人的に刺さる手触り感のようなものがひとつ足りなかったので、
この点数です。天邪鬼ですみません。

・・・あ、イタソーな場面で縮みあがりつつ思わず髪をかきむしってたのを横で見てた
韓国人の友達は失笑するかもしれないですね(その子も息を飲んでたけど(笑))
「めっちゃリアクションしてただろお前!」
そう、ハラハラドキドキ、他の方のレビューにもある通りジャンルをどんどん横断してく映画なので、
見て後悔する人はほとんどいないはず!

まあ気が向いたらコメント欄でネタバレ含んだ感想でも書きます。
以下は例によって、ネタバレではないけど内容に関わるっちゃ関わる感想。
見たくない方は見ないでくださいね〜。

この映画がまた格差問題を扱う作品だ、というのはかなり宣伝されていて、
それも韓国をグローバルな問題なんだけど、
それと関連してメリトクラシーの問題でもあるなと。
メリトクラシーは「能力主義」と訳されるけど、
最近よく目にする言説は、「恵まれた連中は能力主義システムまで乗っ取って、機能不全にしている」というもの。
最近でも韓国では法務大臣に任命された人が娘を留学させたり書いてもない論文の共著者にさせたりして不正にいい大学に入れさせた問題で結局辞任していたけど、
アメリカでは政治家が子供をかなり堂々と有名大学に入れてるのもありつつ、
その他にもお金がかかるスポーツや楽器をやらせてそういう推薦枠でいい学歴を手に入れさせたりとか、
いろんな手を使える結果、メリトクラシーのせいで格差がそのまま維持される、というのがかなり問題になっている。
「へー、大変だねえ韓国は受験戦争熾烈だし、アメリカは学歴とコネ社会だし」
という他人事として言ってるのではなく、日本にもある問題なわけで。
むしろ、「学歴は本人の才能と努力の反映」とより広く信じられてるだけ、問題解決は遠いかもしれない。
(もちろん、才能や努力が今のシステムで全く考慮されていない、とは言ってません)

この映画の主人公たちも、ただ貧しいのではなく、たとえ能力があろうとそれを活かす機会がないという絶望的な状況にいる。
逆に、コネさえあれば、たとえ詐欺でもシステムに入り込めて、
「自分たちのこの地位をどんな手を使っても子供達に維持させたい」、
さらには「自分たちのサークルの外は信用できない」という持てる側の心理をついていく事もできる。
そこらへんは痛快で笑えるポイントなのだが、持てる側の方は窃盗という意識すらない。
持てない側のことは視界にすら入らない・・・
さて、どういうことかは見ていただきましょう。
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