近代国家で資本主義で民主主義。
物は溢れているのに貧しい。
這い上がることが容易でない。
先進国であるからこれから成長する期待も持てず、60年代の共産主義のように「こうすれば世界がよくなるかもしれない」という血潮を燃やせる幻想すらない。
出口がない。
淡い楽観主義にすら釘を刺し、すべてがよくなる未来などありはしないとでも吐き捨てるようなラストシーンがただただ観客の腹の奥に、ずどんと不快感を残す。
関係ないけど昔のドキュメンタリー番組でヤクザの若頭が「生まれ変わったら何になりたいですか?」という質問に「おぼっちゃんでんな。何も不安とかないでっしゃろ」と答えていたことを思い出した。
自分もできることならビバリーヒルズの金持ちの家に生まれて、17歳の誕生日に父親から貰ったフェラーリを前に「なんで青なんだ!僕が欲しかったのは赤なのに!くそ、僕はなんて不幸なんだ!誰も僕をわかってくれない!」
とか言ってのたうちまわるおぼっちゃんになりたかった。