岡田拓朗

パラサイト 半地下の家族の岡田拓朗のレビュー・感想・評価

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
4.0
パラサイト 半地下の家族

幸せ 少しいただきます

2020年映画館初め!
先行上映では予定の関係で鑑賞できず、ずっと楽しみにしていた期待値も爆上がりの状態でやっと鑑賞したけど、それでも満足度が高い。

社会派でありながら、娯楽性をこんなにも持っている(何も考えなくても楽しめる)映画は初めて。
しかもそれを壮大なスケールとして描くのではなく、生活の延長線上でいかにも起こり得そうな題材、スケールで描き切っているのがこれまた凄い!

社会派映画はその重さゆえに鑑賞する人を選ぶというか、おすすめする人を(あの万引き家族ですらも)選ぶが、本作に至っては誰もにおすすめできるわかりやすくおもしろい社会派エンターテイメント映画である。

ポンジュノ監督はあくまで社会派である点はブラさずに、オクジャから「万人が楽しめる社会派映画」という新たなチャレンジに向かいつつあるのかなと思っていたけど、本作はその極みをいってる作品だなと思った。
こんなに観やすい社会派はそうそうない。

よくもまあこんな発想が思いつくなというのと、あのまま豪邸家族に入り込んでいくと思いきや、まさかのどんでん返しが起こっていくまさに予測不能の展開がおもしろさに拍車をかけていくし、そこに韓国の社会構造がさらにくっきりと見えてくる。

合う/合わない、自然/不自然、余裕/切迫、高低や明暗まで、あらゆる対比が社会構造のヒエラルキーの縮図として見事に映し出されている。
こんな縮図を描くのに、失業中の一家に救いようのない重みが全て乗っかかる作りではなく、それぞれへの良し悪しをやや皮肉めいておかしめに描き、50:50にしている感じも他にはなかなかない。

富裕層と貧困層、性善説と性悪説を合致させることで、両極端の人たちが、社会の中で共存し得る(あくまでかもしれない)救いを少しばかり見せてくれたのもよかった。
あくまでかもしれないのがまたポイントですが、そこの内容はネタバレになるので伏せておきます。笑
そこの内容もなかなかの見ものでした!

それにプラスで社会を生き抜いていく上で必要になる要素として計画、知性、適応、信頼関係構築をも本作の中で出していき、そこの本質をも炙り出していく。
ここは妙に「仕事をうまく運んでいくために何をどうすべきか」にリンクさせられる。

逆にこれだけできる人たちが揃っていても全員失業中であり、あのパラサイト(就職先)に縋るしかなくなっていることに、学歴社会のおかしさというか、ジレンマを描いているような感じにも見えた。

それにしても韓国はあんなに半地下で暮らしている人が多いんですかね。
半地下を知ったときにわりと衝撃が走った。

物語を構成していくにあたっての素材の使い方とかも本当に上手だった。
特に階段、電気、犬、水、石。

観てるときはただただ楽しめるけど、終わったあと色々と考えるとスルメのように意図している社会派要素として考えさせられることが多く出てきて意外とズシンともくる。

社会派映画のネクストステージを観たような感じでした。
誰もにおすすめできます!

P.S.
強いて言うなら、完璧(ロジカル)すぎるのと意図がわかりすぎることで、解釈の余地があまり広がらないのが、好みの問題でやや物足りない要素としてはあった。
ここは『バーニング』が上手だったなーという印象だが、あの映画は逆に物語はめっちゃわかりにくいからあまり贅沢言うのはよくないですね!笑
やはりこの両者が共存するのは相当難しいんだろうなーと。
パラサイトとバーニングがお互いを補い合うように合わさった作品ができたとしたら、とてつもない大傑作が生まれそう。
にしてもパルムドールが万引き家族→パラサイトと来てるのが何かいいなー。
岡田拓朗

岡田拓朗