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パラサイト 半地下の家族の小のレビュー・感想・評価

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
4.0
格差問題をベースにしたサスペンスエンターテインメントなのかな。ストーリー、演技、演出などしっかりした作りの、上手いこと考えるよね的な面白い映画だった。

ただ、カンヌのパルムドール受賞作に私が言うのも何なのだけれど、グッとくるとか、しみじみするとかはイマイチなくて、自分的には膝を打って傑作!とは言い難かったというか。

それがどうしてか考えていたのだけれど、ラストのあの人の表情なのではないかという気がする。アレじゃあ、救いがなくて元気も出ないし、共感もできない気がする。

世相を反映してか、格差社会をテーマにした映画が次々に上映されているけど、この1~2年くらいで一段とひどいことになっているということなのかな?

ケン・ローチ監督のパルムドール受賞作『わたしは、ダニエル・ブレイク』(2017年3月公開)は貧困層にまだ立ち向かう気力を感じたけれど、『家族を想うとき』(2019年12月公開)になると救いがなかった。警鐘ということかもしれないけれど、本作にもそれに近い感じを抱いてしまった。

個人的にはやっぱり笑って欲しかった。あえて笑わせなかったのかもしれないけれど、どうしようもなさ過ぎて悲壮感を感じてしまった。本当にどうしようもないとき、人は笑っちゃうしかないじゃない。笑って、逆境にあって自らを客観視する人間のしたたかさを示して欲しかったというか…。

しかし現実は弱者にそんな余裕はなく、日々生きていくことだけに汲々として無気力になっていくしかない、ということなのかもしれない。

マイケル・ムーア監督の『シッコ』によれば、権力者が国民を支配する方法は「恐怖を与え、希望を奪い、士気を挫くこと」。多くの国で「貧しく、士気を挫かれ、恐怖心があるため、命令を聞いて最善を祈るのが一番安全だと思っている」層が多数を占めつつあるのかもしれない。
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