みちみつる

パラサイト 半地下の家族のみちみつるのネタバレレビュー・内容・結末

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

※ガッツリネタバレしてるので未鑑賞の人は読まないことをオススメします。前情報無い方が何倍も楽しめます。

日本公開前からクリエイターからの評価が高かったり、パルムドールを受賞したりで公開をずっと楽しみにしていた作品。早速観に行ったが期待を裏切らない面白さでポン・ジュノ監督の鬼才ぶりを存分に味わえた。
まず全体的な感想として、脚本、演出、音楽の使い方、カメラワーク、映像、キャストの演技などどれをとっても独特な感性があり、クオリティが素晴らしい。韓国映画はほぼ初めて観たので他の韓国映画もそうなのか、ポン・ジュノ監督が飛び抜けて凄いのかはまだわからないが、とにかくレベルの高さに驚いた。
前半までのストーリーはタイトル通り、半地下に住む貧困家族が高台に住む裕福な社長一家の中に家庭教師、美術の先生と学歴・経歴詐称し次々に入り込み一家揃って寄生していく話。と、こう書くといかにも極悪人な家族に聞こえてしまうのであるが、前半はコメディタッチが強く、貧乏でも明るく、仲良く、工夫しながら生活する家族の姿を見せられるのでなんだか憎めないし暗い気持ちにもならない。
そして家族全員が社長一家への潜入に成功するのだが、そのあとの展開は全く予想ができず、ホラーテイストな演出もありとにかくハラハラドキドキさせられる。個人的にはこの中盤くらいの何が待ち受けているかわからないスリル感が1番、面白く感じた。そして高台の家で衝撃の事実が発覚してからひと悶着あるのだが、ドリフのようなドタバタ劇で思わず笑いがこぼれる。北朝鮮をネタにするワンシーンがお気に入り。
後半はとにかく怒涛の展開でシリアスかつスリラー色が濃くなっていく。このように、ジャンルが定義できず目まぐるしく映画の雰囲気が変わっていくのも醍醐味だろう。主人公一家が高台の家から半地下の自宅へ帰っていくシーンがあり、長い階段を下へ、下へと駆け降りて行くのだが、楽しかった一時から一気に奈落の底へと転落していく様を視覚的に表現しておりとても上手いと感じたシーンだ。前半では明るく楽しそうだった主人公一家の表情も後半では打って変わって重く暗いものになるのだが、この表情の変化がとてもうまく、キャストの演技力の高さを実感できる。体育館でのソン・ガンホの表情、セリフが印象的で忘れられない。そして序盤に出てきた“石”、中盤に出てきた“半地下の匂い”がキーとなり悲劇のクライマックスへと突入していく。
そして悲劇が終わったあと、ラストシーンへと向かっていくのだがこのラストシーンがとにかく切ない。一度、希望を見せかけておいて最後は絶望へと突き落とされる救いのない、なんとも後味の悪いラストとなっている。
「格差社会」が主題の今作であるが、ヒエラルキーの最上層にいる家庭、最下層にいる家庭と対照的な家族の生活ぶりを残酷なまでに突きつけられた。やっぱり人を騙すとバチがあたるんだね、とそんな単純な話では無く、「格差社会」が生んだ悲劇であり、誰もが「格差社会」の被害者であるとも考えてしまう。もちろん、裕福でも人を騙す悪い奴はいるし、貧困でも清廉潔白に生きる人もいるのだが、それでも劇中の「お金があるから優しいんだ。私だってお金があればもっと優しい」というセリフが心に引っかかる。