先月たまたま韓国の若者文化を教わる機会があった。
韓国の若者が描く将来の夢は、ソウル市内に家を買うこと、だそうだ。
3大学に入学→正社員として大企業に就職→結婚して市内に家を買う=成功
これが夢とされること自体、いかに実現が難しいかを表している。
キム家は完全な負け組『泥スプーン』家族。半地下の劣悪な環境の家に住み、全員無職で定期収入もない。
対してパク家は夢の具現化そのもの。
丘の上の広く美しい家、父親は会社を経営、美しい母親に可愛くて素直な子どもたち。
夢のスタートラインとなる韓国の大学進学率は約70%、
この高水準はまさに厳しい現実を表しているる。
受験戦争を戦い抜くため、一般家庭の親は子を評判の予備校に通わせ全面バックアップをするのだ。
作中では貧しいキム家の息子ギウは予備校にさえ通えないのに、
裕福なパク家はギウを個人家庭教師として雇う余裕を持つ。
この不条理なスタートラインの対比が、キム家がパク家にパラサイトする足掛かりとなる。
この作品には他にも多くの格差の対比が描かれている。
幸運などではなく『抑圧』の象徴にしか見えない石。
パク家に寄生するうち、言葉にしきれない不公平と貧困への抑圧が、キム一家に確実に増殖しまとわりつく。
ギウが「くっついて離れない」と言ったそれである。
ジメジメとした抑圧は嫌な『匂い』まで放っているが、
毎日のことに鼻が慣れてしまい、キム家の父ギテクは指摘されるまで気付かない。
その抑圧は、地下から這い出た男性によって一気に放たれる。
それは嫌な匂いも一緒に引き連れてきたため、その匂いを普段知らないパク家の父ドンイクに嫌厭されるのだ。
また『計画』も対比のひとつ。
無計画を標榜するギテクと、計画的にサプライズを演出するドンイク。
すべてが失敗してきた負け組と、すべてが計画通りに成功してきた勝ち組。
その超えられない格差に気付いた瞬間、ギテクの頭の中で何かが崩れたのだと思う。
傑作としか言えない作品、深く考えなくても娯楽としても楽しめる素晴らしさ。
また時間を開けて再見したい。