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パラサイト 半地下の家族のすずきのレビュー・感想・評価

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
4.8
半地下の部屋に住む貧乏家庭の長男ギウ。
身分を偽って富豪家庭の娘の家庭教師に就任。
ギウはその家のお母様から、息子の美術家庭教師も探しているという話を聞く。
そこで、美大卒の知り合いと偽って自分の妹を紹介する…

パンフレットの監督のお願いに、「これ以上のネタバレは厳禁」との事なので、あらすじで書けるのはここまで!
以降のレビューには多少のネタバレ入るかもだから、未鑑賞の方は注意してね!





ネタバレ厳禁と言うからには、シナリオにも自信があるんだろうな、これで予想通りなら怒るでポン・ジュノ監督!…と思って鑑賞。
序盤のストーリーは予告編から想像出来る通りの展開だったけど、ブラックコメディチックに描いていて面白かった。

しかし問題の中盤、何か秘密があるとは思ったけど、そう来たか!と驚かされた。
非常に気味の悪い話だし、でもありえない話とは言えない、ギリギリの線。
ある人物の「俺はこの地下室で生まれた気がする」というセリフが重い。

そうして着地点は不明のまま、ただ破局の予感しかしない状態で迎えた終盤。
計画は全て破綻し、無計画で挑んだ彼らに待ち受けるカタストロフィ…。

凄い映画だった。
単純に映画の作り方が上手くて面白いから、話に引きつけられる。
そうして引きつけられた所で、中盤のインパクトでドカンと観客をブン殴る。
そしてその後の大雨のシーンも象徴的。これからの彼らを暗示するエピソードで、視聴者の感情を揺さぶるに完璧な演出。
ポン・ジュノ監督は何から何まで計算ずくなのか…!?

しかし一箇所だけ気になった所が。
それは、地下室にあった、一階のライトのスイッチ関係。
何故あの地下室に一階のスイッチが、というのも謎だし、やたらチカチカしてるライトを不審に思わないのか、とも。
全体の脚本の見事さの中に、ここだけ不格好で、異質なモノを感じる。
何か意図があるのか?私が何か見落としてる?
地下室の男が社長への感謝を伝える為に電気系統を改造した、と考えるのが無難か。

持つ者と持たざる者の、どうしても埋まらない大きな隔たり。
クライマックスのソン・ガンホの、普通ならあの行動を起こす意味なんてないのに、それでもああせずにはいられない、言葉では表せない感情。
しかしそれが映像で演出で、理解させてしまう、やはりポン・ジュノの映画は凄い。
月並みな言葉で表すと、その感情は「狂気」とでも言うのだろうか。
そういう意味では「ジョーカー」と同じ様なテーマ性を持ってると思ったけど、俺はこっちの方が好きだなー。