このレビューはネタバレを含みます
半地下住宅に住むキム一家は全員失業中で、日々の暮らしに困窮していた。ある日、たまたま長男のギウが家庭教師の面接のため、IT企業のCEOを務めるパク氏の豪邸を訪ね、兄に続いて妹のギジョンもその家に足を踏み入れる。
序盤はコメディ、中盤はスリラー、終盤は社会派ドラマとその姿を変えていく一作。
最近こういうジャンルを変調していく作品多いと感じる。全編に共通するのは「気が付かないこと」だ。
冒頭では、下級家族の企みは確実にコメディとして描かれ、上級家族が気がつかないことが面白いこととして描かれている。この辺は「オーシャンズ」のようなケイパーものっぽくもあり、軽いノリで楽しむことができ、視聴者の心を掴む。
そして中盤、今度はスリラーとして、ソファーの上から気がつかないテーブルの下の様子を見事に描く。もちろんテーブルの下ですら気がつかないのだから、"地下"で何が起きているかなんて知る由もない。
豪雨と共に脱出し、水の流れに従って降りてゆく半地下の家族は、終盤に入って気がつく。彼らは気がつかなかったのではなく、気がつけなかったのだと。
そもそも、貧民の動向を感知するセンサーそのものを彼らは持ち合わせていなかったからこそ、彼らは貴族として生きてきたのだ。
そう考えると、序盤と中盤の物語の核が実はもっと空虚なものだったということがわかり、この二項関係に虚しさが増す。
彼らにはまさか(人工的な)自然もなく、太陽の光も入らずに、水が流れ込んでくる家に住む家族の存在など想像のしようもないのだ。
貴族の方の娘役の子がとても可愛かった。