七沖

パラサイト 半地下の家族の七沖のレビュー・感想・評価

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
4.4
〝幸せ 少し いただきます〟
この胸がざわつくキャッチコピーはどうしたことだろう。本作が持つ不穏な雰囲気を表した名フレーズだと思う。

技術はあるものの、就職難で定職に就けず半地下の家で暮らす一家。
ある日長男は、友人の紹介で家庭教師のアルバイトをすることに。バイト先は、豪邸で暮らす裕福な一家。長男ら半地下の家族たちは、この上流階級の一家にうまく取り入ろうと策を巡らし始め…というストーリー。

前半は半地下の家族が上流階級に取り入っていく様子がコミカルに描かれていくが、中盤で作中の空気が激変する。
なんだこの映画は⁉︎
登場人物たちと全く同じ衝撃を観客も味わっていくことになる。こんな展開よく思い付くな…!

この映画を観ていると、隣国・韓国の社会事情がよく分かる。
仕事があるのは幸せなことだ。仕事がなくて貧しくなると、ここまで人は他人に残酷になれるし、手段を選ばなくなってしまうのか。
中盤、ある場所で達観したようにタバコを吸う長女の姿はショッキングだったが、このシーンに衝撃を受ける自分は、恵まれた人生を送ってきたのだなと痛感した。

終盤にかけての展開はさながらジェットコースターのようで、ラストシーンにも胸を抉られた。
だが、観たことを後悔していない。
世界中をみればこの家族と同じまたはそれ以上に不幸な人はたくさんいる。そういう事実を分かっていながらも、自分はどこかで目を逸らしてこれまで生きてきた。
この映画はそんな自分に「なに見ないふりしてんだよ」と正面から掴み掛かってくるような作品だった。

観ないで日々をボンヤリ暮らしていくより、自分の恵まれた境遇を自覚しながら日々を生きていこうと思う。
七沖

七沖