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パラサイト 半地下の家族のKachiのレビュー・感想・評価

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
4.6
【エンタメ×問い掛けを見事にやり抜いた作品】

すでにアカデミー賞作品賞の受賞が決まってからの鑑賞。
監督の意向通り、ネタバレはしないように簡潔にレビューしたい。

また、私自身は大学・大学院で政治学を専攻しており、現代韓国政治に関してもそれなりに勉強してきたつもりだ。昨年『82年生まれ、キム・ジヨン』が話題となったことや、出生率が1.0を割ったことも記憶に新しい。隣国の韓国で現在進行中の社会問題は、対岸の火事ではない。韓国社会は、かなり高度経済成長期の日本を参考にしているところがあり(とりわけ、本作でも触れられる苛烈な大学入試は、元々共通一次・センター試験を模しているらしい)、差異よりも共通点を見つけることのほうが容易かもしれない。そんなことも、織り交ぜていきたい。

さて、本作は「エンタメかつ問い掛け」作品であると振り返りたい。

まず、エンタメ要素について。
(正直、最後の結末は読めてしまったが…)ほとんどのシーンが意外性の連続であった。邦題には「半地下の家族」とあるが、一つにはこの「半」がある種キーワードとなっている。物語の後半で、その伏線を回収していく。また、リッチな家庭に寄生していく半地下家族のメンバーが、一芸で登り詰めていく過程も笑える。非常にテンポよく、寄生していく様は「溺れる者は藁をもつかむ」をまさに体現している。

次に、問い掛けについて。
すぐに思いつくのは、貧富の格差である。これは、資本主義の限界として昨今顕在化している課題であり、全世界的な現象でもある。韓国社会の格差を表しているようで、そこに普遍性が感じられるところが、アカデミー賞作品賞に至った主たる理由なのかもしれない。しかしそれ以外にも、韓国社会特有の課題にスポットライトを当てているようにも思われた。

韓国社会特有の課題としては…
・受験勉強の競争率が高いこと
 韓国では、大学入試は表面上、公平に行われる。(昨今、韓国の政治家の子どもが、裏口入学したというニュースが大きな話題になったのは、形だけでも公平であるべき、いわば「聖域」を犯したことと大きく関係がある。米国でも、多額の金を積んで名門大学に子息を入学させたセレブリティが話題となっている)

 これは裏を返せば、たとえ裕福な家庭であってもしっかりと勉強をしなければ入学ができない。少しでも他者を出し抜くために、子どもたちは朝から晩まで詰め込みで勉強をすることを余儀なくされる。私の友人も、小学校から高校卒業まで、ずっと学校と塾の行き来だったと語っていた。若い時の苦労は買ってもせよとは言うが、度が過ぎると本質を見失う。教育の目的は、生きる力を涵養することだと今でも思っているが、韓国においては試験に突破するための技法や精神力の涵養に尖っており、殺伐とした実情が想像される。

 本作からは読み取りにくいが、実は富裕層にしても、韓国社会は息苦しさがあることを改めて強調したい。だからこそ、週3~4で家庭教師が必要となるのだ。

・女性が生きにくい社会であること
 富裕な家庭の妻が、本作においては愚かに描かれている。彼女は、家事もろくにできず、簡単に騙されてしまうほど純真無垢だ。夫に養われ、時には性欲のはけ口ともなる。この封建的な妻の描かれ方は、先ほど言及した「82年生まれ、キム・ジヨン」をお読みいただければさらに理解を深められるであろうが、女性にとって生きにくい社会、活躍しにくい社会であることも、やはり本作においては重要な点だと思う。

本作のラスト。夢も希望も描けそうにない、半地下生まれの主人公が、束の間の目標を描く。彼の夢が少なくとも可能性として実現させられるような機会を与えられる社会を作っていけるのか。いや、作っていかなければならない。という反語表現が咄嗟に口をついて出てしまった。

鑑賞後、しばらくの間、本作の問い掛けに悶々としてしまった。正直に言えば、最近あまりなかった「疲れた」映画であった。(いい意味で)
受け取ったメッセージを基に、どんなアクションを一人一人がしていくか。そこまで含めての素敵な作品だったと振り返りたい。