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パラサイト 半地下の家族のSPNminacoのレビュー・感想・評価

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
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窓とそこから見える景色の対比、下から上へ上から下へ、そのまた下への移動と階段。庭木に囲まれた庭の眺めは、階級や居住域を隔てる壁と同じだ。水は下へ流れ落ちて血はその場に溜まり、誰かがのし上がると誰かが踏み台にされる。パラサイトしてるのはどちら側なのか。それは世界中同じ構図なんだけど、引き金は憎しみではなく羨望。この映画のキム一家は上への羨望と欲求(或いはプレッシャー)がそれなりにまだあるんだと、そこは少し驚きに感じた。とはいえ、結果的にドン詰まるともう思考停止してシステムに抗うことを止め、囚われてしまうのはどこも同じ。全てを捨て自ら囚われに行った父だが、それでもまだ諦めきれない息子にしぶとさを見る。
疑問というか引っかかったのは、奥様の意外と大衆的で無防備な単純さ(シンプル)とか、それぞれの家族の中にギスギスした葛藤が生じないこと。個人でなく家族ごと「1セット」単位で、記号的に見える。演技は全キャスト素晴らしいけど、そもそも戯画化した役割として設計されたキャラクターだ。
例えばソン・ガンホの顔の赤み、対して地下の人の黒ずんだ目元、そして匂い。見えないものを見せ、考えるより早く具体的行動で示す。全体は寓話的なトーンだが、そこが漫画タッチにも感じた(アニメっぽかった前作『オクジャ』には全然ノレなかったけど)。キャラクターのリアクションや表情に「フッ」「ニヤリ」とか書き文字が付いて見える感じ。何となく作画・望月峯太郎みたいな。
だが、敢えて図式的でOKだという割り切りが潔いとも言える。設定の必然以上にエモーショナルなニュアンスを掘り下げなくても、枝葉部分を全部理解されなくても、ビジュアル的映画文法、共通言語みたいなので充分伝わるから。『天国と地獄』からゾンビ映画まで彷彿させる映画文脈は古今東西共通項。情報量多いのに整然と並べてある。韓国ならではのローカルなディティールには知らないことも多いけど、映画というアートフォームではグローバルにとてもわかりやすいと思う。そこが強みかと。
但し、ケン・ローチやタルデンヌ兄弟みたいなガチ映画なら「その後」なく終わったはずだと思うけど、最後はきれいにまとめてくるところがエンターテインメント映画。いや、ある意味ゾンビ映画に近かった。
ちなみに、これを観たのが地下へぐるっと階段下りた古い映画館。最高に相応しい上映環境だったと思う。