喜連川風連

パラサイト 半地下の家族の喜連川風連のレビュー・感想・評価

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
4.5
地下貧民でもない、地上の楽園でもない、
「半地下」
・スマホは持てるが、Wi-Fiはない。
・家はあるが、汚い。

完全にホームレスまで落ちきったわけではない半地下生活。

そこに巣食う家族のジェットコースター劇。

地下にいるもの(ラストのホームレス)は
地上にいるもの(金持ち)を崇拝し、
半地下にいるものは嫉妬する。

手が届きそうで届かないものほど、強烈な嫉妬を人にもたらす。

ネットで誹謗中傷コメントを書く人にその動機を聞いたところ、そのほとんどが「妬み」や「憂さ晴らし」といった「嫉妬」だったそうだ。

ピザの箱を組み立てていた頃には感じなかった嫉妬。

金持ちの家に飛び込んだからこそ、心に芽生える嫉妬心。

美人な妻、広い家、綺麗な服、かっこいい仕事。
父親にとって持っていないものを全て持っている。

目の前でセックスされたときに、むくむくと嫉妬心は父の心を巣食い、臭いと罵倒され、娘が刺されても、後回しにされたという屈辱から彼の沸点は限界を迎える。

インターネット社会やInstagramは他人の暮らしを可視化し、より嫉妬心を産みやすい構造をもたらしている。

その度に、誹謗中傷コメントはあふれ、運悪く、殺された人もいる。

その反面、家庭教師っぽい仕草や高級ドライバーっぽい動作はYouTubeなどで簡単に調べられることができ、その側面からは、こういった格差もスマホによってボーダーレスになるのかもしれない。

家族が内部に入り込むまで、脚本のほぼ全てにおいて破綻がなく、見事。
富を手にすれば、追われるものがいる。
資本主義は格差の終わらない無間地獄。
かといって、共産主義がもたらした結果はカンボジア政府や北朝鮮、ソ連が証明する通りだ。

加えて、映像観ただけで、これだけ「匂い」を意識させるのもお見事。
観ているだけで、想像してしまう。

息子が半地下に帰るときに、一瞬足を止め、逡巡したのち、汚水にまみれながら現実に戻っていくシーンが1番好き。

今に生きる我々が見るべき作品。
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