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パラサイト 半地下の家族のRingRingLoveのレビュー・感想・評価

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
4.4
子供の絵がなにを描いたものなのか、わかったあとその絵が家族写真の隣に並んでいたことに心底ゾッとした

半地下に住む貧乏家族が、裕福なIT企業社長の家庭にパラサイトしていく過程が見事
物語の中盤までは気楽に観られるコメディ展開
しかし嵐の夜、家主一家が留守となった邸宅を半地下の家族が占拠して満喫していた矢先、突然インターフォンが鳴るところから空気はガラリと変わり、画面もやや薄暗い銀流しの映像に一転する
このシーンは、2時間12分の上映時間のちょうど半分1時間6分に差し掛かったところであると監督がインタビューで明かしており、映画作りの基本に則った様式美への強いこだわりが伺える

匂いと高低差のみで階層社会を表現してしまう技法が素晴らしい
貧民層の身に染み付いた生活臭を富裕層は無邪気に指摘し揶揄する
富裕層のひとたちは山の上に優雅に住まい、貧民層のひとたちはどこまでも下に下に
最下層に住む人々には雨すらも生活を脅かされるほどのたいへんな厄災で、けれど丘の上の人々にとって雨は空気の汚れを取り去って浄化してくれるに過ぎないのだ
出てくる登場人物たちが皆じつに魅力的なキャラクターなだけに、いかんともしがたい落差にやるせなさが増した

この映画はポン・ジュノ本人が言うように、社会派映画ではない
風刺ではあるがあくまでもジャンル映画で、世の中に何か重大な問題提起をするわけでもない
当たり前に存在する格差を当たり前に提示して、そこにエンタテインメントというエッセンスを加えて調理してみせているだけなのだ
だからこそ社会問題を鋭利に突き付けるような押し付けがましさなく、カジュアルな狂気でよりこの映画を忘がたいものにしているように思う

そしてもうひとつ声を大にして言いたいのは、パラサイトが外国語映画として初の米アカデミー作品賞脚本賞監督賞を総ナメにしたことは快挙だけども、韓国映画の中でこの映画が突出して傑作映画なわけではないし、もちろんポン・ジュノの最高傑作でもないということ
今までも韓国映画は傑作を多々作り続けてきたけれど、カンヌで注目を浴びたことでやっと英語圏の人たちにもその凄さが認知されるに至ったに過ぎないよね
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