うめまつ

パラサイト 半地下の家族のうめまつのレビュー・感想・評価

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
3.8
とことんリアルなのに何処かファンタジーのような不思議な映画だった。生々しい感情は見えるのにそれを抱える人物の質量は感じないというか、ずっしり重いはずなのに浮いているような感覚から『ピレネーの城』を思い出しながら観ていた。浮いた岩の頂上に建つ城の静けさとそのずっと下で激しく打ち寄せる波の対比。あの絵画くらい何もかもがコントロールされた〝象徴的″な作品だった。多くの方が言及されてる通り全ての要素に隙がなく、頭の良い人が完璧な設計図を書いてネジの一本まで見定めて組み立てたこれぞ匠!という仕事には唸ったけど、どうしても好きにはなれなかった。(ここから内容に触れます)

それは何故なんだろうとモヤモヤを膨らませたけど、最後まで残った違和感はキム一家の異様な団結力だった。私にとって家族というのは〝理解し合えないけど繋がっている(もしくは繋がらざるを得ない)人達″であり、例えどんなに仲が良くても思考も性格も行動もバラバラのはずなのに、あの4人は目的に向かって全員でほぼひとつの人格を持っている印象で、一人一人のパーソナルな部分が私にはあまり伝わってこなかった。みんな人を騙してる割りに呑気で狡猾な割りに脇が甘い。誰か1人でも他人を蹴落とすことに葛藤したり、行き過ぎた計画(桃とか)に反対したり、正体がバレることを不安がったり、その結果仲違いするような場面があっても良かったのでは。

キム一家が〝乗っ取り計画の為に集まった全く無関係の4人で、いつの間にか疑似家族のようになっていた″ならまだすんなり受け入れられたと思う。そして一番腑に落ちないのはお父さん同士のクライマックス。展開が唐突だとか動機が弱いとかよりも、娘の非常事態に自分のプライドに気を取られる父親に心底がっかりした。すべてにおいて情緒より構造を優先しているように感じて窮屈だった。結果として何処にも気持ちの置き場がなかったので、全速力で走った直後にこってりジャージャー麺を食べさせられたような「疲れた上に胃もたれしたな」というのが率直な感想。
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