銀幕短評(#691)
「新卒ポモドーロ」
2020年、日本。1時間50分。
総合評価 73点
博多のベンチャー企業が ひと手不足の解消で、新卒学生を見よう見まねで採用するのに四苦八苦するはなし。
かなりうまくできていますね。脚本やカメラもいいけれど、なにより出演者の芝居がみなうまい。博多弁もいい。
わたしは数年間、ファーム(事務所)の採用担当を任されました。景気の波にあわせて、資格志望者(合格者)の数にも年度で波がある。売り手市場と買い手市場の波が。どちらの波の年であっても、ぜったいほしいと目をつけていた内定者に辞退されることは断腸の思いがするものです。じぶんのプレゼンに迫力がなかったのだろうか、面接の内容に落ち度があったのか、わたしが人間的な魅力を欠いていたのか、その全部か。まあ、くよくよしても仕方がない、決まったものは変えられない。つぎの一手を考えるだけだ。とは だれもいってくれないので、ぼそぼそ ひとりでつぶやきましたよ。
ひととおり採用の手順を終えると、こんどは わたしひとりだけの厳格で孤独で緻密な作業が残っています。決定した採用者を実際にどの部門のどのクライアントにあてがうかを一晩かけて決める。つまり、優秀な(と思われる)新人を、優良な(難度の高い報酬も高い)クライアントに割り当てる作業です。わたしはそういうやっかいな仕事も任されていたのです。そして、そのあとのフォローも。
採用のデータを握っている者が配属をになうことは確かに効率的ですが、なんだかひとの人生の道すじを わたしひとりで方向づける作業のような気がして、ウンウンいいながら頭を抱えて夜を明かしましたよ、毎年。あと、教育研修の仕事も同時に担当しましたが、これは本部がほとんどやってくれるから楽ちんだったなあ。さて 肝心の本業はどうしていたんだろう。
ここでひとこと、大切なアドバイスをいいますが。あれこれ上から降ってくる仕事をハイハイと気前よく引き受けてやるのはいいけれど、それは ほどほどの量にしないといけないですね。どこかで断る勇気ももたないといけない。そうしないと、韓国映画「オアシス」の回に書いたわたしのようになってしまいますよ。つまり仕事中毒の不幸者に。気をつけてくださいね。