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風の電話のodyssのレビュー・感想・評価

風の電話(2020年製作の映画)
2.5
【設定が緻密さを欠く】

こういう映画ってクサすのがためらわれるんだけど、でも東日本大震災の被災者を扱いさえすればいい作品になるってわけじゃないんだから、作り方についてはちゃんと緻密に考えないといけないと思うんですよね。

なるほど、大震災で家族を失って心の痛みを抱えながら生きている人々の心情はよく伝わってくる。

だけど彼らだって悲しみだけを食って生きているわけじゃない。それ以外に置かれた状況だとか生活条件があるはずなんだが、その辺の描写がきわめて不十分。

例えばヒロインなら高校三年生だから、将来をどうするかを真面目に考える時期でしょう。

また、震災後は広島で叔母と一緒に暮らしていたという設定なんだけど、東北地方の人間が、首都圏ならともかく広島で暮らしているからには、その理由が提示されていないと「?」なんだよね。例えば結婚相手が広島の人だったとか。それと姪と一緒に暮らしているわけだけど、経済的な背景はどうなっているかとか、自分には子供はいないのかとか。

同じように、西島秀俊にしても、今何をやってカネを稼いでいるのかがよく分からない。いくらクルマの中で暮らしているからって、カネがかからないわけじゃなんだから。

ちょっと面白いと思ったのは、西島が震災時に世話になったトルコ人(クルド人?)を探しているという設定。ところがこの筋も途中で消えてしまうんですよね。あれだけ熱心に探していたのに。

諏訪監督ってシナリオなしで映画を作る人らしくて、この映画がそうだったのかどうかは知らないけど、仮にそうだとすればそれが裏目に出た作品だと思うな。

あと、ヒロインを演じるモトーラ世理奈は初めて見たが、スタイルはとてもいいけど、顔がそばかすだらけなのにびっくり。こういうのが逆に魅力的に感じられる世の中なんですかね? 最近の日本人の美意識にはついていけない私なのでした(笑)。
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