痛み悲しみは幾重にも重なり
ただいまを胸の中で繰り返す
かえらないお帰りなさいの声
いつか会えるから待っていて
そのいつかはずっと先にあり
そのいつかを引き寄せない事
思い出せるのは生きる人だけ
悲しみや苦しみは人それぞれにあること、あらためて感じました。占部房子さんの場面は館内いたる所すすり泣き、モトーラさんの演技が自然で目を離せません。「風の電話」の場面は観ていて時が経つのを忘れます。
以下は諏訪監督の舞台挨拶より。これからの方は読まない方が良いかも。
(舞台挨拶の一部、正確ではないです)
モトーラさんは作品の主人公と同じく、問いかけると答えるのに時間がかかる方らしいのですが、ベルリンの観客はそんな彼女を温かく見守るような感じだったそうです。
娘を亡くした母親(占部)が娘の友人(モトーラ)と再会する場面はポイントの一つ。時間とともに薄れていく悲しみもあれば、時間とともに込み上げてくる悲しみもあります。(監督は色々なインタビューで時間の層という言葉を使われています)
物語の最初は台風豪雨の被災地となった呉市を出発地に選び、大津波で甚大な被害のあった岩手県大槌町に家屋の土台しか残っていない場所があったためそこを終着地にしたとのこと。
呉から大槌町まで物語の順番に撮影し台本は無し(感想評価が割れる要因のひとつかも)。最後の風の電話もモトーラさんは事前に見たこともなく、前日にホテルで練習もしたそうですが、ぶっつけ本番で10分を越える風の電話の演技をしました(作品を観ていた時はそんなに長く感じなかったので驚きました)。
作品としては電話の場面が最後となっています。実際の撮影では主人公が呉に帰って身体が不自由になった叔母の世話をしながら学校に通い、旅先で借りたお金もしっかり返す場面もありましたが、モトーラさんの風の電話の10分をみて、もうこの後は無くてもいいと考えたそうです。気になる方は映画ノベライズがあるのでそちらをどうぞ。