horahuki

新感染半島 ファイナル・ステージのhorahukiのレビュー・感想・評価

3.7
Hold on tight!!

11月はゾンビ㉝

前作から四年後。韓国を脱出して香港で暮らす主人公たち韓国人グループは、酷い偏見の目に晒されていた。そこに「2000万ドルを積んだトラックが半島に残されてる。それを回収してほしい」との依頼が。主人公たちは即席チームを作り、ゾンビで溢れかえった半島に再び侵入する…。

『新感染』がどこか(釜山)にあるはずの希望に向かって突き進む物語だとすれば、本作は希望が完全に潰えた世界で必死に生き抜こうとする絶望のサバイバル。

4年ぶりに足を踏み入れた半島はストリートギャングがしきる『マッドマックス』なポストアポカリプス世界と化しており、主人公たちは帰るべき場所・母国を完全に失ったことを自覚を持って目の当たりにする。一方、香港では難民としての偏見が待っている。地獄(韓国)から地獄(香港)への脱出を図る本作には、『新感染』では見えていた「希望としてのどこか」など存在せず、まだ「マシな」地獄を目指し、希望へと変えようとする『MMFR』的な展開となっていた。

もともと『新感染』と『ソウルステーションパンデミック』では、作品のコンセプトの違いからゾンビの設定が別物だったけれど、本作では『新感染』のものをそのまま引き継いでいる。つまり暗闇では目が見えず、音に反応するタイプ。そして、このシリーズのゾンビの最も大きな特徴であるアグレッシブさも更なるパワーアップを遂げ、受け継がれてる。

このアグレッシブさは、もともと『ドーンオブザデッド』でゾンビ映画にハマったと語る監督らしいゾンビ像なのだけど、体の欠損など全く気にせずに獣のようになだれ込む無数のゾンビたちの表現はCGであるからこその強みで、アニメーション監督であるヨンサンホ監督の独壇場。

そして、リアリティ度外視な外連味たっぷりのカッコ良さが爆発するクライマックスが本作の最大の見どころ。『マッドマックス』やオフロード版『ワイルドスピード』とでも言うような古風で骨太なカーチェイスでありながら、筋肉もりもりマッチョマンの変態たちが饗宴する場ではなく、卓球の平野美宇ちゃん似の素朴な外見をした14歳の少女が圧倒的ドライビングテクニックで魅せるというアニメ的楽しさの実写への輸入は監督ならでは。

『新感染』『ソウルステーションパンデミック』と、自己の利のために誰かを平気で切り捨てる資本主義的価値観への嫌悪を全面に押し出していた監督らしさは本作でも発揮されており、『新感染』のパパほどではないながら、本作の主人公も「切り捨て」を序盤で行う。それを後悔として抱えた主人公が人に手を差し伸べるに至る価値観の変遷は露骨な光の演出を含めて本作でも受け継がれている。過去の罪(資本主義)から脱却し、新たな価値観の権化となった主人公たちが目指す地獄への価値観の投下には、スプーン階級論で言い表せられる現状を覆そうとする希望を感じた。

これの予習で『新感染』『ソウルステーションパンデミック』を見直したのと、他の方のレビューに触発されて『死霊のえじき』を見直したので、本作で33作目です。一日一本縛りでやってるので、『ナイトオブザリビンデッド死霊創世記』と『地獄墓地』は見たけど投稿できずでした…その2つはカウントなしで。本当はこの機会に『サンゲリア』『ビヨンド』『ブレインデッド』あたりも見直したかったのだけど、流石に間に合わなかった〜。しかも『ブレインデッド』はヨンサンホ監督が影響を受けたと語ってたから優先的に見とくべきだったわ…😭
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