ベべべっち

あなたの名前を呼べたならのベべべっちのレビュー・感想・評価

あなたの名前を呼べたなら(2018年製作の映画)
4.3
”Sirと呼ぶな”

未亡人のメイドと、結婚が破綻してしまった雇い主との禁断のラブストーリー
…などといった軽い一言で表されるものではない、珠玉のインド映画。

とても静かで
とても繊細で
とても美しく
とてもやるせない映画

インドに残る階級問題を巧妙に盛り込んだこの作品は、おそらく現代日本を舞台としては作れないかと。
もし日本なら、家政婦と雇い主が時間を共有している内に恋に落ちました、、で終わる。汗

その日本なら普通に起こっても何の問題もないことが、文化が違えばタブーとなり、また映画のテーマとなるなんて…

テーマの目の付け所もそうだけど、全体を通しての雰囲気、展開が心地よく素晴らしい。(技術的には…なところもありますが…)
物語の半分は主人公メイドのラトナが住み込んでいる雇い主アシュヴィンの家の中で進む。
昼は掃除、夜に主人が帰ってくると食事を出すの繰り返し。
なのに、それがいちいちオシャレで全く飽きない。

料理のシーンが多い。
何を作っているかさえ、自分にはわからない。
でも見入ってしまう。
服もオシャレ。
バリエーションが豊富。
ファッションと料理だけでも、十分この映画を堪能できる。

二人がお互いを想うようになるまでの過程の描き方がとにかく丁寧。
まるで、触れたら壊れてしまうものを扱うかのような丁寧さ。

それだけに、もどかしい。
階級という壁が立ち塞がる。
未亡人という肩書きが邪魔をする。

同じ屋根の下で暮らしているのに
お互いに想っているのに
名前を呼ぶこともできない
決して交差してはいけない二人の関係

ラストカット。
オシャレとか最高とかそんなのとはまた違う、、とにかく完璧。

原題の『Sir』はめちゃくちゃ良い。
映画を観た後なら『Sir』でいいじゃんと思うけど、やっぱり掴みという点でいうと、この『あなたの名前を呼べたなら』も素敵だと思った。

二人に幸あれ