あしからず

あなたの名前を呼べたならのあしからずのレビュー・感想・評価

あなたの名前を呼べたなら(2018年製作の映画)
4.1
良い映画を観ると胸がいっぱいになって感想がうまく出ない病に名前がほしい。

軟らかな雰囲気とリズムの心地よさや異国の空気を味わえる喜びと、インドの階級制度や時代遅れの風習への理不尽さ。色とりどりの気持ちが込み上げて心がぎゅっとなる。
このままならない社会に縛られながらファッションデザイナーを夢みて静かに輝くラトナの強さに憧れた。好きなことがある人は強いし、足を踏み出せる人はもっと強い。

「神を信じてるんだね」

「私には必要です」

盲信でも強制でも惰性でもなく、自分に必要なものが自分自身で分かっているこの返答が1番印象に残った。これこそラトナの強さではないかと思う。人生は枝分れした道が無数にあるけれどラトナは自分が目指すものを自分できちんと知っている。だから迷わない。彼女はアシュヴィンと結ばれることが決して幸せに直結しない事もちゃんと知っている。だからこそ彼女が最後に選んだ行動があんなに鮮明に写るのだ。どうあれ彼女はこれからも迷子にならないだろう。信じるものがある人は強い。

あと印象的だったのは電話。携帯が発明されて待ち合わせやすれ違いの情緒がなくなったとたまに聞くけれど、この作品は電話の存在のよさが際立つ。居留守によって生まれるラトナとアシュヴィンの共犯意識とか、仕事時間外の着信、そしてあのラスト。使用人とご主人という関係をアシュヴィンが踏み超えたのってあの中盤の電話じゃなかったかなと。小道具の使い方がうまい。

あまりにラトナが幸せそうに服を作るので、影響を受けやすい私も久々に作りたくなってミシンを動かした。しかしアシュヴィンのあの派手なシャツは本当にあれでよかったのかはて
あしからず

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