インドの労働者階級におけるカーストと未だに根強く残る風習、システムを知ることができたのがよかった。監督自身も自国の制度やシステムについて子どもの頃から違和感を持ち、変わっていかなければならないという意識をもっている。
身分の違うもの同士が馴れ合うことについてインド内では常識に近い感覚で考えられ、根付いてしまっている。そのため、変革を起こすことがとても難しいそうだ。
そういった地盤が硬く基礎が頑丈な問題に対してこの作品に、危機感や本気度のような迫るものを感じることができなかった。身分の違うもの同士の間に起きる軋轢や障壁となる1番の象徴に恋愛を持ってきてしまったことが残念だった。クソ喰らえ精神で乗り越えられそうな問題は大げさににいってしまえばさほど大した問題ではない。
しかし、本来は様々な角度から見ればかなり深刻な問題と言える。物語としての美しさを優先し、そこに蓋をしてしまったような印象を受けた。彼女がご主人様に惹かれる理由が身分の低い自分にも優しくしてくれる、お金やコネで支えてくれることに依存しているように見えるのが残念。監督自身が上流階級出身であるならば、なおのこと留意する必要があったのではないかと思う。現実を提示しただけで、あとは観客が受け取って欲しいと言われればそれまでだが。
ただ、屋上から眺めるムンバイの街並みをバックにサリーを着てお茶したりするシーンがかっこよかった。