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あなたの名前を呼べたならのかずシネマのレビュー・感想・評価

あなたの名前を呼べたなら(2018年製作の映画)
3.7
原題の「Sir」もシンプルで良いけれど、作品内容全体の意訳である邦題の「あなたの名前を呼べたなら」も素敵。
来るのは分かってはいたけど、最後のあのワンシーンは鳥肌が立った。
明るい希望が差した気がした。

しっとりとした繊細な作品。
画がとても綺麗。
彼女の、自然に「よく気がつく」描写の数々は女性監督ならではの細かさな気がする。
多分、日常でも細部をよく見てるから描写できる事。

彼女が旦那様を一生懸命励ましているシーンが好きだった。
というか旦那様、都度都度ありがとうと言っていて良い人だなぁ。

村の様子と都会の様子、階級の差。
置かれた立場は違ってもそれぞれが何かを抱えていて。
そんなの関係なく、他人を搾取しよう、利用しようとする人。

昔から「それが正しい、それが普通だ」と日常に馴染んだずっとある価値観を、やっぱり変えてくださいと言われて次の日にでも変えられたら、そんな楽な事はない訳で。
その土地で暮らしている人にしか分からない事だって多くある訳で。
外からあーだこーだ言うのは簡単だろうけど、外からでは分からない事も沢山ある。
「そういうもんだ」と凝り固まっている価値観には階級も都会も田舎も男女も関係ない。

只思うのは、外の価値観に馴染んだ人が再びそこで元の価値観で暮らすのはなかなかギャップに苦しむと思う。
そうでなくても言いたい事が言えない悔しさはずっとあると思う。

これからどう変わっていくか、分からないけれど。
素敵な未来が待っていますように。
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