April01

ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビューのApril01のレビュー・感想・評価

4.1
一気に軽々と超えてきた!というのが率直な感想。ジェンダー含む多様性について、こうあるべきというメッセージを込めました的な説教臭さがなく当たり前のようにスーッと見せている。現実の先にある価値観が高校生の日常風景として提示され、気持ちが次のステージに更新されるような感覚。
体形、見た目、性的指向などの個性はハンディとはならず、それらをマイナスとしてスタートする物語とは一線を画している。
所詮お金持ちの恵まれた家庭環境の余裕の集いでしょ~と意地悪な見方をするのも野暮っていうくらい理想ではある、でもそこが良い!

このストーリーにグッと引き込まれるのは、立場の逆転が起こるトイレの場面から。そういう話か~と俄然面白くなってくる。中だるみはあるもののラストへ向かって見ながらずっと口角上がってた感じ。
ゆるキャラなのに出来る人VSお堅い優等生の葛藤という構図が面白い。ガリ勉に見られずに楽しんでルーズにやってるようで実は出来るのがカッコイイというのは優等生の深層心理にあると思うし、そこまで考える頭があればこそ真の優等生とも言えるわけで。単純な陽キャと陰キャの対立でないところも良い。

それと自分が日本人だからだけど、あちらの映画の中のアジア系俳優はやはり気になるし、いつもは見ていて妙なハラハラがあったりして溶け込む努力と意気込みを感じすぎてしまうことが多いのに、本作はそれ自体が前時代の感覚!と思えるような形でNico Hiragaさん(お父さんが日本人らしい)を使っている。彼自身の強みであるスケートボードシーンをクローズアップする演出も良いし、自然にブレンド、それが普通なんだけど。
ジョン・ヒューズ監督の学園もの青春映画の先駆けの1つ「すてきな片想い」(1984年)でのゲディ・ワタナベさんの使われ方を思い起こせば隔世の感。作り物の映画という架空の世界で無駄に意識してしまう徒労からの解放と、これまで実は見ながら結構気疲れしてたんだということに改めて気づかされる。

メインキャスト勢ぞろいのインタビュー動画を見たら、オリヴィア姉さんとその仲間たちという感じで和気あいあいぶりが楽しく、本作が初監督作となる上から目線でない監督と役者達の間の撮影時のオープンで対等に近い関係性の空気がそのまま画面から溢れ出ているんだな~と納得。
April01

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