ジャン黒糖

ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビューのジャン黒糖のレビュー・感想・評価

4.7
昨年鑑賞済、にも関わらずずっとレビューを書いていなかった本作!
2021年ももう年の瀬が近づいていますが、昨年2020年観た映画ベスト1がこれ、でした!!!笑

【物語】
成績優秀で親友同士のモリーとエイミー。
周りの生徒たちには目もくれず勉強に取り組む姿勢に誇りを持っていたモリーだったが、卒業前日になって実は周りの遊んでばかりいた同級生たちも自分と同じような難関大学に進学することを知り愕然。
これまでの学生生活で失った遊ぶ時間を取り戻すべく、卒業前夜のパーティに2人は乗り込もうとするのだが…。

【感想】
2020年代の映画史はこの作品の前と後とで分けて考えてもいい!ってぐらい強烈に感動した。
現に、本作をMarks!するまでだいぶ間を空けてしまったけど、今年に入ってから観たいくつかの映画の感想をFilmarksに書くときにも実は度々「あの『ブックスマート』のような~」とついつい表現してしまうほど、だいぶこの映画には影響を受けている。

2010年代のアメリカ青春映画のなかでも個人的には大傑作と思っている『スーパーバッド 童貞ウォーズ』や、青春映画の定番中の定番である『ブレックファスト・クラブ』でさえ、いまの価値観から照らしてみると古臭く見えてしまうほど、本作『ブックスマート』で描かれる姿は自分にとって好きになってしまった。

それこそマイ2020年鑑賞映画ベスト10第2位の『ハーフ・オブ・イット 面白いのはこれから』や『ザ・プロム』など、特に現代アメリカの価値観の目覚ましいアップデートぶりを反映した作品が近年増えてきた印象があるけど、なかでも本作『ブックスマート』のそれは良かった。

いわゆるこれ見よがしに「社会のいまを切り取ってますよ」「社会的マイノリティを描いてまっせ」ではなく、本作で描かれるのは、同性愛であることやカミングアウトすること自体が殊更重要でないという感覚。
エイミーは数年前にすでにカミングアウトしているけど、別にそのカミングアウトを理由に家族内や学校内の居心地が悪くなっている訳ではない。
モリーは学校生活の間、勤勉だったけれど学校中の人気者ニックと普通に話すしニックも違和感なく彼女を受け入れる。
彼女はガリ勉だから蔑まれていたのではなく、また、見た目が太ってるからバカにされていた訳でもない。
モリー自身が学校というコミュニティのなかでちゃんと個として認識されているのは前提。彼女自身が周りを寄せ付けない堅さがあるのが原因。

もはや見た目とかいわゆる従来の青春映画では定番中の定番であった”スクールカースト”とかで人を評価しない。

個々人がよりクローズアップされているこの感覚は、実際のアメリカ社会からするとやや理想化されたファンタジーのように感じるかもしれない。
ただ、だからこそ時代や国によって左右されないとても普遍的な舞台となっている。

、とここまで書くと、なんだかとても社会的な映画に感じてしまうが、本作は別にそんな高尚な映画ではない。
終始モリーとエイミーは馬鹿馬鹿しいくだらないやりとりが続くし、ギャグは笑ってしまう。
また、脇を固める生徒たちも誰一人としてヒール的な存在は出てこない。
誰に対しても好きにならずにはいられない要素がある。あの校長先生とかも最高!笑

ちなみに劇中、男女混合のトイレが登場するけれど、実際アメリカでは反発意見もあるものの、近年のLGBTQ+の動きもあって学校の男女混合トイレは増えているらしい。
日本人からすると進んでいると言うか…遠い未来というか…なので本作のある種理想化された学校コミュニティも、あながちファンタジー的といえないのかもしれない。

青春映画の、主人公たちの成長と引き換えに自ずと訪れる青春の終わりを描いた作品が大好物の自分としては、それこそモリー役のビーニー・フェルドスタインの実兄であるジョナ・ヒル主演の大傑作『スーパーバッド 童貞ウォーズ』も思い出させるような、親友同士であるモリーとエイミーの進路をめぐるラストにたまらず切なさが込み上げてき…
と思わせて最後の最後に「やっぱこの2人最高!」って思わず笑いに振っていく品の良さも最高!

何度も観返したくなるし、おそらく今後も何か映画を観るたびに「”ブックスマート的”といってもいい~」と、何かと名前を挙げることもあるかもしれない。
それぐらい個人的には大好きになってしまった1本。
これが監督デビューとは信じられないオリヴィア・ワイルド監督おそるべしな大傑作です!!
パンフレットの中身もめっちゃ良かったー!!
ジャン黒糖

ジャン黒糖