岡田拓朗

ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビューの岡田拓朗のレビュー・感想・評価

4.2
ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー(Booksmart)

最高な私たちを、まだ誰も知らない。

誰もを否定せずに、色んな個性を持つ人たちが同じ目線で共存しながら、青春の酸いも甘いもに浸れる傑作。

笑って泣ける優しくて眩しい世界。みんな違ってみんないい。
誰もを色眼鏡で見ることなく、その人の個性としてポジティブに捉えて、受け止めていく度量を強く感じられた素晴らしい作品だった。

モリーとエイミーは、親友でいつも一緒に過ごしていた。

モリーは生徒会長で、ずっと真面目に勉強一筋。
真面目がゆえに思考の柔軟性に欠けていることで、性格のことを責められることが多く、本人にもその自覚があった。
勉強を真面目に頑張ればよい人生が待っている。
その呪縛から解き放たれないままに、卒業式を迎えようとしていた。

エイミーは、同性愛者であることをモリーにカミングアウトしていたが、肝心の相手にはなかなかその想いを伝えられずに、卒業式を迎えようとしていた。

モリーは進学校に進むことで、高校生活を勉強以外で楽しんできた同級生たちとの優越感に浸るつもりだったが、遊んでいた同級生たちもそれぞれに成功者としての進路を掴んでいた。

モリーは勉強一筋でそれ以外の楽しみを何もかもを捨ててきたのに結局そうじゃない同級生たちと同じような進路になってることを悔しく思い、卒業式前夜に今までの高校生活できなかったことを全て取り戻すべく、エイミーを半ば強引に誘い、2人はパーティーへと向かっていった。

前半はそれぞれの人物にスポットが当てられて、状況や誰が誰に対して想いを抱いているかなどが見え隠れしつつも、話が見境なく広がって突っ走るように進んでいくから、ここからどうなってくんだと少し心配になった。

でもその心配もなんのその、後半に向かうにつれて、しっかりと青春の酸いも甘いもが、恋愛をはじめ色んな観点で描かれていって、それらから落とし込まれる世界観が節々までもう本当に最高で、涙が溢れてきた。

卒業式のスピーチのシーンとそれまでの一連のシークエンスは、特に号泣必至。
自らの考える正しさや考え方に固執して凝り固まっていたモリーが、個性溢れる卒業生(同級生)たちに、ありったけの賛辞を送る。
決められた価値観の中で生き続けるのではなく、自らで色んな世界に飛び込んでいくことへの尊さを感じ取ることができた。

あくまで映し出しているのは、過去ではなく現在なのに、登場人物たちがどんな学生生活を送ってきているのかが、ちゃんとイメージできた上で感情移入できるのもよい。

あと下ネタがわりと多いけど笑、そこに全然嫌悪感を抱かずに、よい意味でおもしろおかしく観ていられる。
その描き方も含めて、何かと絶妙な塩梅で成り立っていたと思う。

正しさと正しさの衝突が争いに繋がるのであれば、人それぞれにその正しさの枠を受け入れ合いながら広げていけばよい。
それでも譲れないものもあるから、そこまで踏み込んだ上で、お互いに受け入れ合えたらもっと素晴らしいし、それによって自分の世界もよい意味で広がっていく。
そうやってみんなが仲良くできたら素敵だなと。
そんな理想的な世界が、本作には広がっていた。

誰もがありのままの自分を受け入れ、受け入れられながら生きていける世界。
もし衝突したとしても、ちゃんとお互いが反省した上で、誤って仲直りができ、さらに仲が深まっていく友情。
利害関係なく応援し合えたり、助け合うことができる関係。
そして、何より色んな個性が溢れる中で共存できるコミュニティ。
全てが愛おしく感じられた。

これら全てを卒業式前夜〜卒業式だけで描き切る見せ方と構成も、本当に凄すぎて圧巻。

本当に誰もにおすすめしたい、革新的な傑作青春映画の誕生です!
岡田拓朗

岡田拓朗