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キャロラインのhorahukiのレビュー・感想・評価

キャロライン(2018年製作の映画)
4.0
心を抉られるような痛み…

今回の試写会で4本見ましたが、これが圧倒的に面白かった。物語がこの後どう傾いていくのか。安易な予想を覆し、観客の心を最後まで揺さぶり続け、深く突き刺さるような余韻を残す。短編の可能性を感じさせる傑作でした。

炎天下のテキサス。仕事の面接に行くママ。幼い子どもたち3人を預かってもらおうとするも友だちは誰も助けてくれない。面接会場前の駐車場に車を停め、止むを得ず6歳の長女に車のキーを渡し、暑くなったらエアコンを入れるようにやり方をレクチャーして面接へ行くママ。車内に残された子どもたち。そこへ見知らぬオバさんが窓をノックして来て…。

その場には「善」しか居合わせていないのに、事態がどんどん悪い方向に傾いて行くという遣る瀬無さ。

生きるため、そして子どもたちを育てるため。褒められたことではないにしても、パンク寸前の思考の中、必死に行動する彼女と彼女から滲み出る子どもへの愛情を目の当たりにするからこそ、彼女の行動には賛同はできないにしても容認せざるを得ない息苦しさを感じるし、そこにはやはり社会的に許されない表面上の事実が確実に存在し、その事実だけが世間に伝わってしまうからこそ「善」が空回りし、明確なものではないにしろ「悪」へと転じ伝播してしまう。

最後のキャロラインの行動は、全ての事情を知る者だからこそな母へのこれ以上にない赦しではあるのだけど、それ以上に何かを齎らすものではなく、手の中に転がったそれは決して消えない「痛み」として家族に社会的にも内面的にも重く今後のしかかって行くだろうことが予想され本当に辛くなった。
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