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罪の声のOBのレビュー・感想・評価

罪の声(2020年製作の映画)
4.3
2020年度日本アカデミー賞優秀作品賞群のラスト鑑賞作。

同年のアカデミー賞には、いつもながらの大手映画会社のビジネス優先行為とテレビ局の視聴率稼ぎ臭が臭過ぎて、批判的なレビューも書いた為、これはノミネート作品は観なければ失礼だろうと本作を持って全作鑑賞。

で本作。

最後にして、これは見応えのある骨太な名作だった。キネ旬ベスト10やアカデミー賞ノミネートも納得。

30年前のグリコ・森永事件を独自解釈で解明していく。未読ではあるが、そもそも原作が素晴らしいのだろう。

ある小さなきっかけからその裏に潜む真相が徐々に見えて行き、最後にはその全貌が明らかになっていく脚本は見事の一言。

当時の社会背景とのリンクや、社会大義と個人の人生を計り最終的には個人に寄り添う主題も深く、観る側を全く飽きさせない。

事件関係者と新聞記者の双方の切り口で同時並行に進み、ある時点でリンクするトリッキーな展開も面白くよく出来ている。

主役2人は相変わらずの安定運行。良くも悪くもいつもの二人だった。
比して宇野祥平は流石の名演。役名である“総一郎“にしか見えなかった。各賞受賞も納得。

批判を恐れず言えば、荒削り感のあった『ミッドナイトスワン』よりも本作の方が日本アカデミー賞最優秀作品賞に相応しかったように思う。

アカデミー賞関係者が
「大手映画会社にはノミネートで、TV局には華のある役者を出演させ、うるさい視聴者にはインディーズのMスワンを最優秀にすることで、全てを丸く収めよう。」
と全てにおいて本質ではない判断をしていないことを望みたい。

さすがにないと思いますが。(笑)
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