シエル

アメイジング・グレイス アレサ・フランクリンのシエルのレビュー・感想・評価

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アレサには健全で健康で真っ当なイメージがある。

そんなアレサだから、辛さを歌っても湿っぽくならず、「明日は今日より良くなる」と言う希望に変える力がある。

しかし、歌が胸に刺さった時に感じる、ソワソワと落ち着きのない感じを、彼女の歌には感じないのはなぜだろう。

彼女の歌は素晴らしい。
しかし雑味が無さすぎる。
たぶんそれが理由。
雑味とは何か、は良くわからないけれど、歌い手の人生からくる何かだと思う。

アメイジンググレイスを聴いた時、胸に刺さる感じもなく感動したとも思っていないのに、なぜか涙がこぼれた。
意識とは関係のないどこかに物理的に作用して目から水を出させたような感じ。
これは非常に不思議な体験で、いかにもゴスペルっぽい。

本作の後『リスペクト』(2021)を観て、本作における父親登場時の違和感に合点が行った。

ただ愛されて育った牧師の娘、というイメージを持っていたがそう単純な話でもなかったのだなと。
伸び伸びと上へ上へ登る通る声で、人生の雑味を覆っていたのかもしれないなと思った。

(過去の鑑賞メモ)
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