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パブリック 図書館の奇跡のyuuuumiのレビュー・感想・評価

パブリック 図書館の奇跡(2018年製作の映画)
4.7
タイトルに図書館とか、ブックがあるとなぜか気になってしまいます。
この物語は、ホームレスという世界が抱える社会問題について提起しています。

図書館にはホームレスの出入りがあり、水回りを占拠し出す場面は、とても日本では考えられない光景でした。
しかし、この図書館、どれだけの変な人が集まってくるのかとクスっとできる光景も。

ある日体臭を理由に図書館を出ていくよう指示したことにより、訴えられたり、図書館の本を破損修理したりと何かと忙しい図書館員達。

夜の冷え込みが厳し過ぎる為、寝泊まりする場所が死活問題であるホームレス達が依然として止まないのは、ほんとに深刻な社会問題であると思います。寒さを凌ぐ為に『今夜は図書館を占拠する、平和的デモだ』と集まってきたホームレス達の為に一晩だけでも場所を解放してあげてと寄り添ってあげる人もいれば、所詮他人事だと聞き入れない意見も様々な状況は、ほんとに難しい社会問題であると思います。

上からの要求に屈せず、逆にこの寒空の外で、コンクリートの上に毛布なしで横たわってみるように要求を返した図書館員スチュワートの、実際に体験してみないとわからないことだと訴える姿には共感しました。

ホームレス達は危害を加えたい訳ではなく、自分達の存在を世に知らせたい、声を挙げたい一心なのが、この映画からとても伝わってきました。
しかし、私自身が両者の立場ならと考えた時に、夜は屋根のある建物で朝を迎えたいだろうし、公共の場でホームレスに占拠されても困るだろう。どうか対策を考えてくださいと懇願するしかできないもどかしさも感じました。

スチュワートが『怒りの葡萄』という本を読み上げた時の伝える力はお手本にしたい。両者の気持ちをとても鮮明に伝えあげる力は、知識の豊富さの大切さや、怒りを抑える技の勉強にもなりました。

難しい社会問題を笑いや、ユーモアを交えての物語に仕上げたエミリオ・エステベス監督、脚本、主演のこの映画は素晴らしかったです。
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