けーすけ

パブリック 図書館の奇跡のけーすけのレビュー・感想・評価

パブリック 図書館の奇跡(2018年製作の映画)
3.8
スチュアート・グッドソンはオハイオ州のシンシナティ公共図書館で働く館員。公共の場である図書館は誰でも利用できるため、ホームレスである路上生活者達の拠り所ともなっていた。
大寒波の影響で緊急シェルターも満員になっているある日、行き場の無いホームレス達が「今夜はここを占拠する」と言い籠城を始めてしまった。巻き込まれてしまったスチュアートは困惑しながらも彼らと行動を共にする事に・・・





邦題でついた“図書館の奇跡”ってので、てっきり実話ベースかと思ってましたが、監督・脚本、そしてスチュアートを演じたエミリオ・エステベスによって製作されたオリジナルな物語。

タイトルゆえにハートフルな感動ものかと思ってましたが、原題の『The Public』の通り「公共とはなんぞや」を主軸に図書館に立てこもったホームレス、警察やメディアを巻き込んだ話として笑い半分シリアス半分という感じで描かれていました。


冒頭から図書館の開館と同時に押し寄せる人々にはホームレスが多々。彼らはトイレの洗面で歯磨きをしたり顔を洗ったり。日本で同じ事をしたらつまみだされるかもだけど、彼らにとっては公共施設でのそういった事は当たり前。スチュアートも図書館がそういった“場”として存在している事には肯定的。

そしてホームレス達が図書館を占拠したのも、行き場がなく凍死の危機を憂慮して「声を上げよう!」という単純な動機からで、スチュアートも当初は「巻き込まれただけで平和なデモだし、なんとかなるかな…」って考えただろうけど、彼自身の過去の経歴や、メディアの報道から流れは徐々におかしな方向へ、、、。


次期市長選への出馬を狙う検察官は「異常者による人質たてこもり事件」と訴えたり、平和なデモ行動だと伝えるはずの動画もメディアによって歪曲して報道されたりと、暴力なしに弱者の声を出す行動のはずが、周囲によって全く異なった内容の危険なものに仕立て上げられていく様は実際にありえそう。

また、ホームレスの問題を主軸としつつも、それら以外の社会的弱者や、それこそ世界レベルでのデジタル・ディバイドや貧困といいた格差を訴えかけているようにも思えましたね。

人権問題や人種問題、さらには環境問題や政治的な思惑など、色々と詰め込んだ感もありますが、立てこもった彼らが最後に取った行動には驚きと笑いも含まれており「そうやるか~!」とニヤリとさせられました。
ただ、この事態の根本的な問題解決には至っていないので、そのあたりの行く末も見たかった気がしますが、これは“あらゆる問題提起な映画だった”のかな、と。


観終わった後はピザが食べたくなる一作かも。面白かったです。



2021/05/02(日) TSUTAYA DISCAS定額レンタルにて鑑賞。
[2021-041]
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