にくそん

パブリック 図書館の奇跡のにくそんのレビュー・感想・評価

パブリック 図書館の奇跡(2018年製作の映画)
3.3
木曜日にヒューマントラストシネマ渋谷での上映が終わるっていうので滑り込みで観た。感想書いてる今日が日曜日。難しかったんだよな。私が住む街にはホームレスの人の段ボールの家もあるし、今ちょうど宮下公園の管理者とホームレスを運営している人たちでモメてたりするし、どうしても現実の問題がチラついて、映画を映画として楽しむのに私が失敗した。

主人公たちが正義で、検察官が悪っていう構図に落とし込むのがなんか、それはまた違うんじゃないかって思ってしまった。検察官の人間性が強欲で鼻持ちならないクズだからまだ主人公たちに肩入れしやすくなってるけど、これがもし、ヤツが嫌な人間じゃなかったら? 現実、高い社会的地位を築いている人の多くは、あんな絵に描いたような嫌な奴らしい振る舞いはしないのであって。わざとらしい人物造形だなと思ってしまった。

ホームレスの一人(この映画の主要キャラの一人)が、「夢は路上生活を抜け出すこと?」って聞かれたとき、「いや、どうかな。(この生活は)自由だから」と言っていた。彼のプライドが言わせたことかもしれないけど、やっぱりそう言われちゃうとな。私は働き、対価として得たお金で家を借りていて、そこでは裸でいてもいいし、仕事や何かの約束の時間までは好きなことをしていい。そういうふうに一生懸命、自由を買い続けている身には、あんまり気持ちよく聞けるインタビューじゃなかった。

たぶん、ホームレスという生き方そのものまで踏み込んで考えないほうがいいんだと思う。他人様の生き方なんて、誰にジャッジできるものでもないんだし。生き方自体はともかくとして、極寒の夜ぐらいはホームレスに公共施設を開放する柔軟な運用があってもいいよねっていうその一点だけ考えたほうが、この映画は楽しめるかも。

好きだったところも書いておくと、音楽がよかった。それから、ビッグ・ジョージに、スチュアートが「このメガネをかけたらレーザー・アイの威力は無効になるよ」って言ってあげるところ。「レーザー・アイ」なんかお前の妄想だって切り捨てるんじゃなく、ジョージの妄想に付き合いながら生きやすくしてあげるのは優しい。あと、目立ちたがり屋の不勉強なレポーター(ガブリエル・ユニオン)の顔がかわいかったです。
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