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突き射すのmのレビュー・感想・評価

突き射す(2019年製作の映画)
4.7
役者デビュー作となった今泉力哉監督「退屈な日々にさようならを」で強い存在感を放ち、「来る」にも出演した女優・猫目はちの監督第2作。

これは猫目はち初監督作品「つま先だけが恋をした」の続編なのだけど単なる続編ではなく、『「つま先だけが恋をした」を監督・脚本・主演した女優の撮影後の物語』という入れ子構造を持つメタフィクション続編になっている。
私的な感情を極私的な形で映画化した前作に続いて、前作を撮った事で感じた監督が抱いた感情をそのままの形で映画化するという点で、更に私的さが極まった作品なのだけど、やはり前作同様何かが切実にこちらに刺さる、いや射さる。そこにこの映画の、猫目はち監督の凄味がある。全編で統一された作品の空気感も見事。
今回少し違うのは、監督自身が演じる女性を見守る男の子の視点がとても強い事で、彼の友人とのやり取りも印象的だった。自分の感情にとことん主観的なだけではなく、客観性もあるのが良い。

今作に出演している村田唯も自身の監督作でそうだったが、女優が自分自身で脚本を書き自分を演出するとやはり他人には見つけられなかった魅力が出るらしく、前作に続き猫目はちの演技は力強く繊細で素晴らしい。
田中爽一郎の頼りない優しさ、門田宗大の気の良さ、村田唯の柔らかさ、広木健太の声、そして中山求一郎の最後の台詞、と各役者陣も印象深い。


某映画の題名を借りると、まさに『わたしを葬る』作品だった。猫目さんには生きてほしい。
猫目はち作曲・歌唱によるエンディング曲もCocco的で素晴らしく、その力強さと切なさとがパワフルに心に刻まれる。こちらから聴けるので、もし良ければ是非。
https://youtu.be/ET4saEMRrUM
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