TAK44マグナム

ザ・バウンサーのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

ザ・バウンサー(2018年製作の映画)
3.7
年末はヴァン・ダム!


全人類激動の2020年、いよいよ大晦日ということで恒例の(?)ヴァン・ダム作品で今年のレビューを締めたいと思います!

主に90年代を駆け抜けたヴァン・ダムもそろそろ年齢からいって、たんなるアクション俳優というカテゴリーからの脱皮が必要。
今までにも何度かチャレンジしてきた「演技派」へのステップアップですが、ここにきて遂に開花した感じがする作品が誕生しましたね!
例えばスタローンなども「クリード」や「ランボーラストブラッド」と自身の大ヒットシリーズを締めくくる際に、とんでもない存在感を見せつける圧巻の演技を披露してくれて、そりゃもう泣けたわけです。
で、ヴァン・ダムはそういったヒットシリーズが「ユニバーサルソルジャー」ぐらいなのですが、あちらは演技派でいこうとしたらヘンテコなビジュアルばかりがイメージ先行してしまいましてね。
行き着くところまで行ってしまった感があるのでどうするんだろうと思っていたわけです。
すると、本作を観た方々の評判がすこぶる良く、宇多丸さんのラジオでもヴァン・ダム特集回で推されてました。
どうやらヴァン・ダムが今までの殻を見事に破っているらしい。
というわけで、2020年の年末に観るヴァン・ダムは本作にしようと、ずっと温めていた次第。

それで以って実際に観てみると正直、暗くて地味。
ヴァン・ダムに染みついた世間のイメージからヴァンダミングなアクションを期待すると肩透かしを喰らって惨死してしまいかねません(汗)
なにせ股も割りませんしね。
回し蹴りやハイキックがズバズバっとキマるような映画では全くないのです。
だけれども、良い!
うらぶれても尚、死んだように見える瞳の奥には炎がくすぶる主人公ルカスをこれほどまでに体現するとは、ヴァン・ダムって完全に演技派じゃないですか!

ストリップ劇場の用心棒職にありついた元護衛官が過去や娘をネタに警察、そして紙幣偽造組織の両方から利用されまくって四面楚歌になるお話なのですが、普通なら勘弁してくれって状況ですよ。
たぶんスタローンだって泣きたくなります。
セガールだったら相手を泣かすけれど(苦笑)
ではヴァン・ダムならどうするのかっていうと、ひたすら耐えるんですね。
可愛い娘を守るために、耐えて耐えて耐えまくるのです。
グッドファーザー賞は本作のヴァン・ダム(というかルカスというキャラクター)にこそ与えられるべき!
静かに、全力で生き抜くヴァン・ダム!
派手なアクションは無いけれど、底辺で足掻き続ける男を演じるヴァンダミングノワールも悪くありません。
終わり方も余韻が感じられて涙腺を刺激してくれました。

演出も実に堅固。
移動する場面などは後ろから追従して撮っており、彩度を落としてくすんだ映像のトーンも相まって、リアルなドキュメンタリー感があります。
どこか、FPSのゲームの様にも思えました。
ヴァン・ダム以外の俳優さんたちも渋い芝居をしていて皆んな巧く、健気な娘ちゃんも可愛らしい。
あれなら誰でも守りたくなりますよ。


ところで、邦題の「ザ・バウンサー」だと、そこまで用心棒の仕事をしている場面は多くないのでタイトル詐欺に映るかもしれません。
用心棒という要素は、あくまでも物語の導入部に使われる推進剤でしかありません。
ここはひとつ、原題である「ルカス」という名前を持つ1人の男の生き様を描く作品なのだから、「ルカス」でOKなのではないでしょうか。
(アクション映画として売るのであれば)分かりやすいし、プロモーションがしやすいのでしょうけれど、「レオン」や「アナ」等のリュック・ベッソン作品と同じ軸線上の系譜にある作品ですから「ザ・バウンサー」よりも「ルカス」のままが正解だったと思います。
だって「レオン」が「ザ・ヒットマン」みたいなありきたりなタイトルだったら、いくらスティングの名曲が流れようともあそこまで泣けませんよ、たぶん(汗)


しかし、きっと本作は映画史に埋れていってしまうことでしょう。
例えそうだとしても、ここへきてのヴァン・ダムの輝きは捨て置けません。
何回ヴァン・ダムって書いているんだ状態ですが(汗)、やはりヴァン・ダムは格好いい!
掛け値なしにヴァンダホーな良作💪
ジャン=クロード・ヴァン・ダムは永遠不滅です!!



・・・そんなわけで2020年も過ぎ去ろうとしていますね。
今年一年、拙い駄文にお付き合いして頂き、ありがとうございました!
また来年も、どうにかこうにか細々と続けてゆく予定ですので、どうか宜しくお願い致します。
では、Filmarksの皆さん、良いお年をお迎えください〜!


OSOREZONEにて