Taka

初恋のTakaのレビュー・感想・評価

初恋(2020年製作の映画)
4.3
‪首が飛ぶ、血が舞う、麻薬まみれの裏社会バイオレンスワールドに巻き込まれた主人公の濃密な一夜は正しく"初恋"。人生一度きりなら、たまには死ぬ覚悟で走り抜けるのも悪くはねぇ。タイトルやキャスティングに惹かれた観客を最高に騙していく、東映、三池崇史監督の新たなる傑作。‬

近年の東映の傑作として「孤狼の血」(「初恋」と同じプロデューサーが手がけている)が挙げられるが、それに匹敵する作品。あの(ちゃんと昔の荒波の)東映のロゴ、ヤクザ映画として文句なしの出来…こういうのを観たかった!をまた味わえたのはすごく良かった。東映、やるじゃねぇかと。

‪ヤクザ映画と言ってもただのヤクザ映画ではない。ヤクザの計画が段々とズレていき、ヤクザ同士の生き残りをかけた戦いに主人公が巻き込まれ、そして事態はカオスと化す。しかし、ラストに向けて主人公の生きるという躍動から生まれる恋と覚悟が走り抜けていく。話の作りはタランティーノ的な構築の仕方なのだが、タイトルからは予想も出来ない展開が待ち受けている。

‪まさか、こんな映画だったとは…そんな声が観終わった観客たちからポツリポツリと聞こえてきた。しかし、この映画はそういう映画だ。パンフレットの三池崇史監督のインタビューにも書いてあったが、最近の映画には驚きがないと。展開が読めてしまい、ただ映画を共有し、安心して場内を出てしまうと。こういう映画がたまにあっても良いじゃないか。‬タイトルからは想像できないバイオレンスな世界観。むしろ、東映のヤクザ映画を復活させるにはこういう映画もぶち込んでいかないといけない気がする。日本の観客たちに気を照らした映画をたくさん観させる必要があるかもしれない。そんな風に感じた。‬

‪あと、なんと言ってもキャスティングが素晴らしかった…窪田正孝、小西桜子、染谷将太、内野聖陽、大森南朋、ベッキー、塩見三省。どれも100点満点のキャスティング。ちゃんと見せ場がある。‬

‪最後にもう一つだけ褒めると、説明的な台詞を少なくして、視覚的にカオスな世界観の状況把握を済ませたのはすごく良かった。‬それがラストには顕著に現れていた。この作品、映画の良くないアレコレを詰め込めてないからさらに良い。

ヤクザ映画として、東映映画として、三池崇史監督作品としてもこれは傑作でした。‬
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