賽の河原

初恋の賽の河原のレビュー・感想・評価

初恋(2020年製作の映画)
4.4
Twitter界隈で評判が良かった『初恋』を観てきました。まあ映画観るときって大概そうなんですけど、事前に情報は何にも入れてなくてね。『初恋』ってタイトルの映画のイメージで行ったら「え?そういう映画なの?」ってなりましてね。そういや映画最初に例によって岩に波が弾ける「東映」っていうロゴが入っててね。「ほーん、なんか東映の映画観んの久しぶりやな」とか思ってたわけですけど、『狐狼の血』も素晴らしかったけど、最近の東映、すげえ頑張ってるな!今のところ今年の日本映画で1番楽しめた作品だし、ちょっと露悪的なジャンル映画ではありますけど、普通に傑作と言って差し支えない素晴らしい作品だとおもいましたね。
全く情報を持ってなかったし、そんなに期待しないで観ててね。序盤にまあ普通のレベルのボクシングシーンみたいなのがありまして。演出とかは普通なんですけどね、「やっぱりスモーキーかっけえな!」っていう。
いや、本当最近ハイローに異常にハマってるっていうのはあるにせよさ、私としてはかなり微妙だった蜷川美花大監督の『diner』ですらさ、当時の感想に「窪田正孝さん、カッコよ...。」って書いてますからね。あの映画で窪田正孝さん「スフレ...。スフレおいちー!生きてて良かったぁ!!」みたいな演技しかさせられてなかったですからね?w 『ハイロー』のスモーキーにしたって映画版では基本的に黙って空見て咳き込んでるだけですから。それですらカッコいい。とにかく姿形がスゲーカッコよくてね。お前どうしたんだってくらい窪田正孝にハマってるっていうw
だからもう窪田正孝さんが2時間出演してるだけで残念ながら1億点出てしまっているという
で、なんかボクシングの映画なの?これとか思ってたら序盤から濃厚な暴力の香りを漂わせていてね。最近暴力にもハマってるんですけど(ry
とにかく冒頭から生首が転がったり、歌舞伎町っぽい街中でのヤクザの様子とかね。「あっ、これは東映の映画なんだ」と思い出させると話は、クスリの売買をめぐって一儲け考えてるヤクザの染谷将太さんと、それに癒着する刑事の大森南朋さんの話になっていくんですよね。
ここは結構硬派なつくりっていうかね、2人で寂れた焼き肉屋で儲けの計画を話すところとか渋くてすごく観てて「いい」って感じなんですが、いざ実際にその計画を実行に移すと...。っていうね。
もう完全にバイオレンスコメディ、というかタランティーノ的な悪ノリの連続でね。『トゥルー・ロマンス』っぽい感じなんですけど。好き嫌い分かれるとは思うんだけど、私は大好物。そもそも仕事を選ばないからアレな感じになってる三池崇史監督ですけど、やっぱりこういう悪ノリバイオレンスアクションみたいなの撮らせたら本当に素晴らしいですよね。
っていうのも、正直最近暴力にハマってるんですけど(ry
とにかく、こういうヤクザとか任侠とかみたいなジャンル映画って最近本当に下火になっちゃってるっていうかさ。本来なら「ジャンル映画」なんだからB級だろうがバンバン作られたって良いようにも思いますけど、ジャンルとしてあんまし作られなくなっちゃってるっていうのが現状としてあるわけじゃないですか。粗製濫造されるキラキラ青春映画の20%くらいは撮るのやめて暴力映画撮ったっていいじゃないですか。でもシネコンとかではまずかからないし、作られたとしても結構ハードで深刻なテンションの映画にならざるを得ない。
そういう意味で三池監督レベルの人が今更こういうテンションのバイオレンスコメディをちゃんと撮ってる時点で1億点出ますよね。
もう演者も隅々まで素晴らしくてね。染谷将太さんには徹底的に笑わせられたし、もうあのスマホの電話のシーンとかクソ笑うしさ。終盤のクルマの中でのシーンとその後のオチとか下らなすぎる状況で、久しぶりに劇場で大爆笑できたね。
大森南朋さんの小物感もいいし、言うまでもなくベッキーさんの演技もね。いやぁ。優勝w 内野聖陽さんもいいしね。それぞれ1億点出てる。
で、勿論バイオレンスコメディなんだけど『初恋』ってタイトルだけあって窪田正孝さんと小西桜子さんのストーリーも控えめでいいよね。特にポン中の小西桜子さんの目の下にクマがげっそりあって「見えてはいけないものが見えちゃってる様子」とか可愛らしくも弱々しくてね、窪田正孝ならずとも守りたくなる愛らしさが見事だしね。電車内のシーンの映画的な感情の動きの捻りみたいもの最高ですよ。
この映画って二つの要素が結構バキッと決まっていて、それが途中で分かるようになってますよね。
一つは「あ、これ東映映画なんだ」っていう。中盤とかのバイオレンスに話を思いっきり引っ張られるんですけど、終盤夜が明けていくとね。「あ、この映画は夜が明けていく物語だったんだ」って気づかされるという。
だからこの映画は2人の夜が明けていくことだけでもなかなかうまい作りだと思うんですけど、真に感動的なのは夜が明けたあとの話なんですよね。
あんまし説明しても野暮ですけど、夜が明けるっていうのはポジティブな話なようにも思えるけど、実は明るいなかで今まで見えなかった、あるいは見ようとしなかった現実とも向き合わざるを得なくなっていく。
これは誰にでもある、非常に普遍的なことなんだけど、その現実に向き合う人間の姿がラストカットに美しくも控えめに映し出されたとき、物語の輪が見事に閉じるという...。
いささかマフィア側の人間とかのキャラクターが多すぎて終盤のアクションは渋滞気味だったり、ホームセンターという立地は面白いけど、アクションではちょっとアイデア不足かなとか、あるいはホームセンターを抜けるところの飛躍をどう受け止めるかとかっていうところはありますけど、私としては本当に大満足の作品したね。上映館は少なくなってきてるんですけど、本当にコメディは爆笑ですしね、時期が時期だけに観る人が少ないのはいささか残念な映画ですね。
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