せんきち

新宿泥棒日記のせんきちのレビュー・感想・評価

新宿泥棒日記(1969年製作の映画)
2.4
千葉市美術館の特集にて。


大島渚による実験映画。それも大失敗。

1968年、新宿紀伊國屋書店。岡ノ上鳥男 と名のる青年(横尾忠則)は書店員鈴木ウメ子 と呼ばれる女(横山リエ)に万引きを捕らえられる。社長の田辺茂一(本人!)に注意され見逃される鳥男。鳥男はウメ子につきまとい始める。



かろうじて粗筋書けるのはここまで。後は完全に筋がない。新宿駅前で繰り広げられる唐十郎と状況劇場のパフォーマンス。佐藤慶、渡辺文雄、戸浦六宏が多分本当に酔っ払って語る「性の解放」論議、性科学者高橋鉄による講釈、合間に入る唐十郎の「こーこはアリバーバー謎の街ー」という本当に謎なチムチムチェリーの替え歌。そしてそれら全てをぶっ壊す紀伊國屋書店社長田辺茂一の棒演技!アフレコであれか!ここまで棒かというかスティックというか。

面白いのはその背景にある当時の新宿の姿。面影は残ってはいるが、ここまで違ってみえるものかと。背景のアングラの香りと新宿騒乱の欠片が見えたりと。

とはいえ、筋がないので眠くなるし、つまらない。救いは横山リエの美しさ。破綻した失敗作ではあるが横山リエを美しく撮っているのだけは素晴らしい。クライマックスで語られる横山リエの胸の傷の話がほぼ実体験と聞いてびびる。最初から最後まで虚実乱れた映画。


本作に限らずATG映画全般に言えるが、難解なテーマやアートという言い訳で女優を脱がしてる。いわばインテリ向けのポルノ映画。事実、本作なんて全編横山リエへのセクハラで成立してる。


これと真逆なのは社会問題を労働者階級向けのポルノに忍び込ませた鈴木則文(こっちは東映)。私は鈴木則文の方が好き。