やすやす

はちどりのやすやすのレビュー・感想・評価

はちどり(2018年製作の映画)
4.8
エンドロールで奏でられた静かなピアノの
音に涙腺を強く刺激されて涙があふれた。
深い余韻が胸を包む至高の作品。

悲惨で信じれられない様な光景とともに人
々に記憶される年が各国にある。
日本は阪神大震災やオウム事件に見舞われ
た1995年、あるいは東日本大震災の2011
年。
米国なら9・11テロが起きた2001年。
そして韓国は1994年になるのだろうか。
北朝鮮の金日成主席死去の激震冷めやらぬ
中、首都の中心部で起きた惨事。国家の基
盤を揺るがす様な非常事態。それは翌年に
もさらなる規模で繰り返された。

今作はそんな韓国の歴史上の転換点とも言
える1994年にソウルの片隅で懸命に生きる
一人の少女を描く。
戦前の日本の様な封建制の家族。兄の暴力
に耐える様が見ていて辛くなり胸を締め付
けられる。そもそも女性を叩くとか私には
信じがたく未知の世界。妹を守りいたわる
のが兄の務めではないのか。
そんな不条理にまみれた絶望的な世界。
少女は最後にある光景を目の当たりにする。
どうして、こんなことが起きたのか?
政治や社会と自身が密接に関わっているこ
とをこれでもかと思い知ったのではないか。
14歳なら十分にその意味を理解できるはず
だ。
このがく然となる様な光景は男性優位の古
くさい社会と全く関係ないと言えるだろう
か。変えなければいけないのではないか。
そう訴え掛けているようにも思えた。
果たしてそれから25年が経過し韓国社会は
どの様に進歩したのだろう。むしろ変わっ
ていないから今作が作られたのだろうか。

作中では触れられていないが1994年は米国
のクリントン政権が北朝鮮の核関連施設の
攻撃を真剣に検討していた。結局は北の反
撃でソウルが火の海になることを恐れ実行
出来なかったが少女の命と引き換えにでも
攻撃していれば今、北の核の脅威に怯える
ことも無かった。やはり綺麗事だけではこ
の世界は成り立たない。悲しい現実です。

皆さん、素晴らしいレビューを書かれてい
るのでつまらない余談をつらつらと書きま
したm(_ _)m
やすやす

やすやす